(その1) 一連の聴取記録を執筆してきて、ハイドンの作曲年代が特定できないのは、列挙してきた。中野著「ハイドン 交響曲」の最初の部分で、作曲年代の設定の問題の中でも言及されている。膨大な交響曲を作曲して来た中、当時は印刷技術はあったにしても、出版という高価な手段が中心で、簡単には作曲家自身でさえ、整理がされていないらしい。この著書の中でも、晩年の1805年、18歳から73歳までに作曲してきたことを、折にふれて思い出すのが、わが全作品の目録との表記の元、「ハイドン目録」が作成された。 (その2)この目録は、エルスラーの子ヨーハンが作成したとされている。しかしこの目録でさえも、作曲年代順に配列されていないと記述があった。 実際この目録は、どの様な順番であったのかが、以前から興味があった。最近、入手した「ハイドン&モーツァルト弦楽四重奏曲を聴く」 井上太郎著に、この目録の写しが記載されていた。(p188) それによると、元々の目録の実際のサイズは私には分からないが、No.1から23まで2列12段に渡って、エルスラーと思われる人物により主題が記載されている。各主題は第1楽章?と思われる冒頭部分のみが記載されて、調性、テンポ、(Alleglo等)の単旋律が中心で、わずか2〜4小節程度しか記載がされていない。 (その3) しかし、この短い部分ではあるが晩年の記憶の不確かさは、私にも十分に読み取れる。まず中野著にも記載をしてあった作曲順番について。最初期の交響曲は、無論特定は現在でも中々難しいであるかもしれない。この目録では、No.6〜8の3作が順番に最初に掲載されている。このNo.6〜8よりも前に記載をされた交響曲もあると思うが、目録には記載がされていない。 その後の交響曲の順番はどうなっているかと、自分なりにチェックをしてみた。全てのチェックが終わってはいないが(8月15日現在)、No.4はhob-No.-9、No.5はhob-No.-11、続くno6は、hob-No.20となっている。少なくとも、作曲順番に関してもバラバラになっている。No.6〜8の3曲がセットで一番に掲載されていることから「晩年になっても、この3曲は、ハイドンにとって、生涯、最初期から気に入って、印象に残っていたものではないか?」とも推定できる。実際この3曲は初期の頃ではあるが、自筆楽譜はその一部が現存している。
以下、暫時、更新予定。 |
表1 ハイドン目録の冒頭の部分の一覧
目録 No. |
hob No. |
調 性 |
目録テンポ指示 |
実際のテンポ |
俗称他 |
|
1 |
6 |
D |
Adagio |
Adagio |
朝 |
|
2 |
7 |
C |
Largetto |
Adagio |
昼 |
|
3 |
8 |
G |
不鮮明で不明 |
Alleglo molto |
晩 |
|
4 |
9 |
C |
Molto Vivace |
Alleglo con brio |
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|
5 |
11 |
Es |
Andante |
Adagio |
|
|
6 |
20 |
C |
Spiritoso |
Alleglo molto |
|
|
7 |
|
B? |
Alleglo |
現時点で特定できず |
|
|
8 |
14 |
A |
不鮮明で不明 |
Alleglreto |
|
|
9 |
5 |
C |
Adagio |
Adagio |
|
|
10 |
1 |
D |
不鮮明で不明 |
Presto |
|
|
11 |
12 |
E |
Alleglreto |
Alleglo |
|
|
12 |
A |
C |
Alleglo |
Alleglo |
|
|
13 |
|
F? |
Moderato |
現時点で特定できず |
|
|
14 |
13 |
D |
Spiritoso |
Alleglo molto |
|
|
15 |
40 |
F |
Vivace |
Alleglo |
|
|
16 |
21 |
A |
Andante |
Adagio |
|
|
17 |
34 |
d |
Andante |
Adagio |
|
|
18 |
23 |
G |
不鮮明で不明 |
Alleglo |
|
|
19 |
24 |
D |
Alleglo |
Alleglo? |
|
|
20 |
22 |
Es |
poco Adagio |
Adagio |
哲学者 |
|
21 |
30 |
C |
Spiritoso |
Alleglo |
アレルヤ |
|
22 |
29 |
E |
Alleglreto |
Alleglo di molto |
|
|
23 |
39 |
g |
Vivace |
Alleglo |
|
|
24 |
28 |
A |
Alleglo |
Alleglo molto |
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(その4)晩年の記憶が「あいまい」であったのは、作曲順番だけではなく、テンポの指示にも現れる。目録でのテンポの指示と実際に現在、出版されているテンポとは、大きく異なっている。24曲の中で2曲はまだ、私なりに特定できない。 残る22曲でも、上記の表1の中でも、黄色の文字の様に14曲が異なっている。(実に半分以上は異なっている) また、 Spiritosoの指示も、従来の出版されいるものは、表記されていない。テンポの指示の一つをとってみても、記憶があいまいな点はあったと思われる。 |
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