ハイドン交響曲通しNo. 1-10

音楽聴取記録（交響曲の聴取　各曲の聴取記録　通しNo.56　hob-No.-51）

通
No

Hob.
Nｏ.

通称名

作曲年

調性

楽
章
数

ｆｌ

ｆｇ

trp

timp

cmb

ランク

聴きどころ、ポイント

1773

(1)

Adagioのhr.soloの音域の広さ。

Vivace

Adagio

Menuet-trioⅠ-trioⅡ

Finale,Alleglo

Vivaceは、展開部の真ん中当たりで、第1主題が擬似的に再現される。経過部、さらに第2主題が展開される雰囲気は、この後の中後期に見られる手法。提示部は比較的短いが、再現部はかなり拡大されていて、全体の規模はかなり大きくなっている。
　第2楽章は、Hr.を主体とした管が活躍。特にhr.かなりの高音域と低音域を伴う。これほどの音域が広いと奏者も大変と思った。弦は終始、伴奏に徹する。trioは２つあるが、Menuetの主部がその分少し短い。Finaleは、ロンド形式と変奏曲を組み合わせたような感じ。調性は余り変化ない。1箇所短調がある。
　ドラティ盤は、Vivaceの最初の第1主題から、フィッシャーと異なり、ゆったりとした雰囲気。
　

井上著の本では、強弱記号の中に、カランド(calando）　だんだん減じて行く）と言う初めて指定が出てくる。これ一つををとっても、ハイドンは、いかに同時代の作曲家と比べて、非常に前衛的であったのかがわかる交響曲と記載がある。calandの箇所は、Vivaceの提示部と再現部の終わりの方にある。

2014年1月20日　追記。Micha　Lute　　ブログ　Ⅱ　（以下のサイト）からの記事より。
http://micha072.blog.fc2.com/blog-entry-197.html
このNo.51を含むフィッシャー盤の49-51　（CD14）について、3曲をまとめてであるが、記載がある。この中で、No.51については、第2楽章のhr.の最低音域の演奏技術の高さに関して、フィッシャー盤の奏者の評価を賞賛。私の聴取環境では細かい音の判別が難しく、デイビス、ホグウッド、ヴァイルの録音の細かいところまでは分かりにくい。しかしながら、このコメントからすると、フィッシャー盤の録音は、以下の様に記述されている。
「録音は音質的にはややデッドですが、各パートを間近で録って、聴きやすく高域を押えてステレオ配置した、いかにも合成的な感じですが、不思議とわるくないんですね、演奏内容がくっきり分離して熱気生々しく聴こえてきます。」この曲でも、私が感じていた通りに聞こえた。なお、vn.を含めたsoloの扱い方など、私と共通する観点が多いと思った。

2011年1月12日ディビス盤を聴取。ジャケットでは、この交響曲より、次のシリーズ「エンターティメントへ向けて」に入る。スコアを見ると、calandoの指定を含む強弱記号が、今まで以上に要求されているのが分かる。ディビス盤の演奏でも、これに忠実に守って演奏をしている。
　また、Adagioの2本のEs管のhr.は非常に高い音と最低限に近い音域が要求される。楽器の数は少ないが、演奏技術は非常に高いものが要求される。これに伴い、当時のエルテルハージ楽団の技術力の高さが分かる交響曲と思う。hr.は注意深く聴いてみると、soloの箇所も多いが、2つのパートが分担し合っている箇所もある。
　Menuetのテンポが3拍子になっていない。trioが2つある。前衛的な交響曲と表現をされているのはぴったりであると思った。しかし裏を返せば、演奏技術の高さがその分要求される訳である。Finaleでは、親しみ易い主題とこの頃に導入し始めたロンド風の変奏曲を採用することで、少しは、解消をさせたかもしれない。
　楽器の数は少ないが、演奏技術の高さのため、人気の点では、少し劣ったのではないかと思った。聴衆への分かりやすさ、交響曲の広がりを持っていく上で、試作の交響曲の一つと理解したい。ランクはCのままで、フィッシャー盤を推したい。

交響曲の分水嶺　hrを例に取っての楽器のパートについて　2011年10月22日　記載
作曲順番と通し番号の兼ね合いからすると、hob‐No46から、48、35などがまだ、間にある。しかし今回少し先に進んで、No51について書いてみたい。この前後に、作曲年代が自筆楽譜で確定しているのは、No45－47は1772年。No54－58は1774年がある。（他にもあるかもしれないが）。この前半の45‐47シリーズと54ー58シリーズの両者をまとめて比較してみると、明らかに違いがあると思う。
　ハイドンの作曲年代を様々に分けることは可能であろうが、そのキーポイントは、大衆あるいは聴衆への「わかりやすさ」があると思う。前半のシリーズは、あくまで、エステルハージ楽団の演奏の範囲内を想定した作曲ではないか。
　soloパートが至る箇所にあり、楽章によっては、めまぐるしい転調。一部では、他の楽章の旋律を別な楽章に持ってくるなどの実験的な試みもある。これらは、演奏技術の高い決まった楽団があっての演奏だからこそ、作曲ができたのであろう。
　それに対して、後者のシリーズでは、転調は、同じ様にあるが、soloの箇所が明らかに減っている。作曲者は、大衆や聴衆への分かりやすさを重視したために、soloの箇所を減らしたのでないか。また、楽譜が次第に数多く出版され行き、各地で広まっていくことを意識し始めたのも原因ではないか。出版は印刷技術の向上が多いと思う。また楽譜の出版とあわせて、各地で演奏もされる。その際には、どのパートもsoloで演奏できる様な高い技術をもったエルテルハージ楽団ばかりとは限らない。むしろsoloのパートの演奏は困難な楽団が多いであろう。そうなるとsoloパートの箇所は必然的に減ってくる。
　このNo51の第２楽章は、2人のHrのsolo（正確には複数の奏者なのでsoli）が活躍する。soloは楽章を殆ど通じて活躍し、他の楽器は、殆ど伴奏に徹している。この頃より後の曲は、もはや、楽章を通じて、全般で活躍する手法は、見られないと思う。この曲は、エルテルハージ楽団のsoloの様式を残す最後の曲の特徴であると思った。　特に、2人の奏者は、音域がとてつもなく広い。井上著の本では、高い変イ音まで上がるが、この音を出す不可能に近いと言う。
　一方、第３楽章のMenutetでは、2つあるTrioは、実験的な要素になる最後の方の試み。Finaleは、今後もしばしば採用採用されるロンド風の変奏曲を採用するなど、今後のスタイルを確立してい行く様式。聴衆への「わかりやすさ」をキーワードとして、104曲余りの交響曲を2つに大別した場合、この曲が中間点、あるいは分水嶺に相当すると思った。
（その２）分水嶺についての補足をしたい。分水嶺は、頂上付近。分水嶺を歩いて行く例えにすると、過去のスタイルを踏襲しながらも、これから先のスタイルが見えているパターン。
　第２楽章のsolo楽器を採用とした様式は、過去のパターンを踏襲している。また、第３楽章の２つのtrioは、実験的な試み。しかしながらFinaleの変奏曲のロンド形式は、これからの採用されてくるパターン。この両者の形式がちょうど、この曲で採用されている、中間点。この様な例えで表現をしてみたい。

2013年8月18日　追記。ホグウッド盤を聴取。交響曲の分水嶺として、この曲については、第2楽章のhr.を中心にコメントをしてきた。ホグウッド盤では、恐らくナチュラルhr.を使用していると思うが、かなりの高音域と低音域の部分があり、奏者の腕の見せ所。
　Finaleの変奏曲ではを含めて、管楽器のsoloがいたるところに入りながらも、聴衆への分かりやすさも兼ね備えた曲であることを再認識。ただしホグッウッドならではの、特徴は余り印象に残らず。

2017年2月3日　T.　ピノック　No.51を聴取。交響曲の分水嶺としても記載をした曲。No.38と対比させてみると面白い。調性は異なるが、No.38は第3楽章から第4楽章にかけてob.が活躍。Finaleはあたかもob.協奏曲の様に締めくくる。一方こちらのNo.51は、第2楽章でhr.が活躍するが、第3楽章以降もあまり目立たないがhr.が活躍。
　第3楽章のMenuetの主部でぴノックの演奏は、回帰してくる部分は、繰り返しは必要に応じて採用。概して小節数が短い場合は、繰り返しを採用している。この曲ではtrioが２つあるためか、Menuetの主部は前半と後半の８小節ずつ。主部が短いこともあって、合計3回演奏されるMenuetは繰り返しを全て採用。第2trioのhrも第2楽章に引き立てて活躍。
　Finaleのhr.は、余り目立たない個所が多い。しかしcodaに近いT80の部分。主題がob.とhr.の管楽器で演奏される。Finaleに近い部分に向けて、この主題を目立たせる部分である。ピノックの演奏では、Ob.よりもhr.の方を引き立たせている。No．51の交響曲は、hr.の活躍で最後は、締めくくりたい解釈の一つかもしれない

2018年6月1日　ベーラ・ドラホシュ／スウェーデン室内管の51番　を聴取。数が多いハイドンの交響曲でも、余り取り上げられない方の曲。ハイドンの魅力のひとつに、短い動機から主題が構成され、展開されていく魅力がある。(ロマン派の交響曲の主題などとは対照的)この第1楽章もその典型で、僅か１小節にも満たない。提示部だけでも、これ以外に様々な動機が登場する。しかしNo.48の第1楽章の様な「てんこ盛」の雰囲気は余りない。Hr.を含む各パートにsoloの箇所が随所にあり、No.48とは異なる雰囲気。録音が比較的新しく低弦の厚みがあり、弦の各パートとの対比が自然。たとえば提示部のT52の部分。第2主題が登場する直前vn.２部による、柔らかい旋律との対比もあり、低弦が厚みをもって　f　での演奏。どの指揮者も、この部分は低弦の厚みを強調するが、ドラホシュの場合も同様。
　第2楽章のHr.の奏者は右側で並んで位置。hr.の音量もやや強調はされているが。楽章の終結に向けて、２人のhr.も他のパートに埋もれることもなく、存在感を発揮している自然な解釈

2019年4月5日　エルンスト・メルツェンドルファー　ウィーン室内管弦楽団　 51番を聴取。交響曲の分水嶺として何度も記載をしてきた曲。全集でない場合まずは、めったに注目されない曲のひとつ。hr.を中心とした管楽器のsoloが活躍しながらも、Finaleは、分かりやすいロンド形式でしかも変奏曲。技巧を伴いながらも、分かりやすさが混在することから、自分なりに分水嶺と記載した。作曲順番から聞いてくると、殆ど真ん中当たり。作曲順番では数年先にはNo.53が控えている。
　hr.は得てして、第2楽章ではかなり目立つ。しかし最初の第1楽章　T10からもhr.は既に入っている。第2楽章の活躍を先駆している雰囲気。また第3楽章　２つあるtrio。第2　Trioでも　hr.は活躍。その他の箇所もhr.が活躍している。
　過去のブログで、スピルナーの演奏では、２名のhr.奏者が、左右に分かれてステレオ感のある広がりが良い印象を記載した。しかし、多くの録音はhr.は片側に並んでいる。

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-699.html

　メルツェンドルファーの演奏も、右側に固まっている。hr.を中心とした録音がポイントとなる。録音のレンジが少し狭い。弦楽器は、それほど、歪がない。しかしhr.に関しては、高音域を中心に歪が目立つ。第3楽章の第2　Trioなどは、２名のhr.の掛け合いが聴き所。しかしここでも不鮮明。録音の点で、やはり大きなマイナスとなっている。