ハイドン交響曲通しNo. 1-10

音楽聴取記録（交響曲の聴取　各曲の聴取記録　通しNo.40　hob-No.-28）

通
No

Hob.
Nｏ.

通称名

作曲年

調性

楽
章
数

ｆｌ

ｆｇ

trp

timp

cmb

ランク

聴きどころ、ポイント

1765

(1)

Alleglo　di molto

Poco　adagio

Menuet＆torio、allegretto

Presto

Allegloの第1主題が単一で執拗に繰り返される。第2主題の区別が余りない、単一主題に近い中規模のソナタ形式。展開部は執拗な第1主題のみを用いるが短く発展も少ない。展開部の使い方は及ばないが、後期のHob－No.-No.88の様に、単一主題を繰り返しながら、楽章を聴き通す雰囲気は似ている。第2楽章は全ての弦楽器に弱音器を使用で管は休み。Menuetは主題の提示が印象的。一瞬ギスギスした雰囲気があるが、どの様にして、この様な音がでるのか自分では分からない。*1
　ドラティ盤はAllegloで展開部、再現部の繰り返しがない。Menuetの出だしは、フィッシャーよりも控えめになっている。

*1「2009年10月13日　追記」　その後、参考文献「ハイドン106の交響曲を聴く」を参照した結果。第3楽章の最初のMenuet主題のホ音について。「最初のホの音は、vn.の開放弦と非開放弦を交互に弾く指定になっている」と記載されていた。記載されていた主題によると、一番最初のホ音は、非開放弦の音。その直後の音は、開放弦の音。2つのホ音は、同じ音程ではあるが、非開放弦と開放弦とでは、鳴り方が異なる。この2つの音は、第1vn.と第2ｖｎ.で使い分けているかどうかは、私の聴取環境では分からないが。（もし第2vn.が右側に配置されていたら、はっきり区別ができたかもしれないが、フィッシャー盤では、第1.2ともに左側に位置する。）

2010年12月31日ディビス盤を聴取。Menuetの主部では、開放弦と非開放弦の音色の違いが楽しめる。Prestoでは最初の始まりが短いfugaで始まっている。要所要所で、hr.高々に鳴り響く。
Hob－No.-28～29は作曲年代が近接している。作風的には地味に属すると思う。しかしエステルハージ楽団の奏者の演奏技巧を尊重し、様々な細かい工夫が必要とした雰囲気。soloの手法は今後も続くが、やや実験的な演奏技巧などが、この演奏をピークに少しずつ減ってくると思う。

2011年4月18日スコアを見ながら3者の演奏を聴取。Alegloの第1主題は、単一主題の形式に近いと前にも記した。属調の第2主題は、T22からすぐに登場すると思うが、提示部の中でも転調を繰り返す。注目すべき点の一つとして同じリズムの動機が終始、支配をしていること。単一主題の例として、第2主題の間も低弦を中心に第1主題のリズムが支配をしている。
　第2楽章は中期以降は頻繁な例でもあるvn.の弱音器の使用が登場。フィッシャー盤は例によって随所に第1,2vn.のsoloを採用。このsoloの部分は、弱音器の合奏部分と違ってスタッカートの音色と対比的。Hob－No.-54の第2楽章にも見られる様に、一定のテンポを重視している用法が先駆的に採用していると思う。
　第3楽章のMenuet主部の主題で、非開放弦と開放弦の交互で引く箇所は興味深い。以前は第1と第2vn.が交互に引いた可能性も指摘をした。しかしスコアでは、2つのパートが同じ旋律をユニゾンで演奏していることが判明。さらに興味深いことは、第1小節ばかりでなく第3小節以降も至るところで、この手法を駆使している。Menuetの後半では、開放弦でなく隣同士の弦を同じ音程で引いている箇所もある。
　楽章全体を通じて共通している特徴の一つと思うが、弦の音域の広さを重視したのではないか？　他の交響曲以上に、音域の跳躍が大きい。また調性がAという影響も大きい。弦楽器.の基調の音がA調は多い。(逆にもしフラット系の調性だとこの様な手法は困難と思う）　第3楽章のMenuetの主部の開放弦と非開放弦の用法は前記した。これも音域の広さを聴衆に意識させる興味深い方法であろう。
　しかし聴衆はあくまでエステルハージ楽団及びその関係者のみに留まる。このためこそ、逆にハイドンは様々な実験ができたのではないか？ランクはDとしているが、何度か聴き返して比べてみると意外な発見があるがある曲の一つである。
　ドラティ盤ではAdagioで珍しく第1、2vn.のsoloがある。ただしフィッシャー盤ほどsoloは目立たない。ディビス盤はAllegloのテンポがやや遅め。Andanteの弦のsoloはなし。通しNo.順に聴き通して行くと、この当たりで一区切りとなる。ディビス盤ではCDのジャケットの色は変わり、新たなシリーズにバトンタッチ。

2012 年8月31日追加　
この交響曲で、第３楽章の奏法について、かなり記載をしてきた。最近、入手した　井上著「ハイドン&モーツァルト弦楽四重奏曲を聴く」の中で、この点に関して、興味ある記事があった。作品50プロイセン王セットの　hob-Ⅲ：49　D-dur　俗称「蛙」の部分で、この奏法について記載があった。
　この部分で、この奏法は「バリオラージュ」と記載がしてあった。第1vn.のみがこの奏法になっていた。弦楽四重奏曲であるから、一人がこの奏法をすることになる。　バリオラージュの奏法は、vn.の中でソリストほどの高いレベルが必要とされるかどうかは私には分からない。(詳しくは記憶していないが、有名ななJCバッハの　無伴奏vn.　のシャコンヌにも、この奏法があったと思う）
　この奏法は、この後に続くNo.45　の終楽章に一部、見入られると思う。しかしそれ以降のハイドンの交響曲には、私が知る限り見当たらない。実験的に、この部分を作曲したかもしれない。

2013年4月6日　追記。ホグウッド盤を聴取。通しNo.34　hob－No.24にも、第1楽章の主題の５つの分類で記載をしたが、これも当てはまる。すなわち、No.24と同様に、「短い動機の反復による主題」の例としてこれも相当。調性はもちろん違うが、ベートーベンの　第5交響曲の第1楽章にも類似。こちらも、やはり僅か１小節の短い動機が主題となっている。
　それに対して、ハイドンのこの交響曲ではテンポがAlleglo　di　molto　と軽快。類似した旋律でも、曲がこれほど異なるのは、音楽を聴いていく上でも醍醐味のひとつ。ホグウッド盤では今まで聴いてきた3者の中で、テンポがかなり速く、一気に駆け抜けてしまう雰囲気。再現部でob.のsoloが入り、提示部と一瞬、雰囲気が違うのがアクセント。
　第3楽章のバリオラージュ奏法は思ったより目立たない。得てして２つのvn.ばかりに聞き入ってしまうが、vn.以外の他のパートも同じ奏法がある。ホグウッド盤では、これがほとんど聴こえない。低弦の人数が少ないためかもしれない。

2019年1月15日　追記。以前　R　レッパードで　エラート分売盤の中から　No.101と104を記載した。その３曲目に、パイヤール　No.28が収録されている。2007　Worner　Music　Group　Company　からの出典しか記載していない。録音年月日等は不明。パイヤールでザロモンセット　No.94、　100、101を記載した。パイヤールのその他の曲をどれぐらい録音しているかは分からないが、初期から中期の交響曲は少ないのではないか。その中のひとつと思う。No.28は自筆楽譜が存在している曲のひとつ。編成も小さく曲の雰囲気からして、soloの箇所は殆どないが自前の楽団で　バリオラージュ　などの特殊奏法などがあるユニークな曲。
　以前この曲でホッグウッドが、第1楽章の冒頭で、とてもつもない速さで演奏した記憶がある。Alleglo　di　Molto　の指示にはなっているが、とても速くて一挙に終わってしまうので、中々この曲の面白さを見出すことが難しい。

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-167.html

　一方パイヤールの演奏は、テンポが比較的遅くて曲の微妙な面白さが分かりやすい。録音の少ない曲に関しては聴取の回数が少ないこともあって、比較をするのが難しい。このためこの様にテンポの遅い曲はありがたい。

　ハイドンの交響曲で冒頭から面白さが分かるのは最初の冒頭の動機だと思う。曲によっては、ロマン派の様に長い旋律が時折見られることもある。しかし多くは、短い動機で組み合わせるのが昔から好きになっている。この動機はその典型で4分の３拍子になっている。ベートーベンのNo.5の冒頭の様な雰囲気に近いが、こちらは拍子が異なることもあり全く違う雰囲気。類似した動機でありながら、拍子は調性によって曲が異なるのは、とても興味深いひとつ。Tuittiでの開始でない。対旋律の第2vn.以下に休止の部分があるのである意味、緊張感のある雰囲気が漂う。展開部でも盛り上がるところがあり。打楽器群が全くない中、第1楽章ひとつをとっても現代の聴取者に、面白さがスコアから読み取れる。
　第3楽章のバリオラージュの部分。冒頭からテンポがややゆっくり目なので、開放弦と非開放弦の違いがホッグウッド違ってよく分かる。この主題の冒頭は　f　のミ(E)で開始されるがMenuet　の中間部分　T13で　シ　（H）　４　と１　の番号がある。開放弦を使用しない部分でバリオラージュがある。音量も低くこれまで余り分からなかった。冒頭で　f　のミ　(A)の開放弦の音と音程と音量が異なることもあり興味深い。Trioもさらにテンポを落とし、4つある曲のひとつで存在感が高い雰囲気。
　Finaleもそれほど快活で速くないテンポ。元々、余り長い小節数ではあるが丁寧に、展開部と再現部の繰り返しはこの楽章では採用している。このため充実感も高い。今までこの曲を余り高く評価をしていなかった。しかし別な演奏を聴くことでまた、違う楽しさが満喫できた機会だと思う。

2019年3月19日　エルンスト・メルツェンドルファー　ウィーン室内管弦楽団　 28番を聴取。この曲もobが前面に出ている典型のひとつ。第1楽章の冒頭は弦楽器のみで特徴のある８分音符が登場する。8分音符の動機は、いたる所で展開していくので、刻む様な緊張感が欲しいところ。提示部のT54で小結尾部に入る。ここでは第1vn.が冒頭での調性を変えた動機が締めくくる。これ以外も第2vn.以下のシンコペーションの動機や管楽器の持続音など様々に登場。しかしあくまで第1vn.がメインで聴かせて欲しいところ。残念ながらここでもob.の長い持続音が表に出てしまい、他のパートが聴こえ難い。

第2楽章は、弦楽器のみを使用。この楽章は、余り目立たない方だと思うが、冒頭から３小節目までの動機と、その後のT4-6の２つから構成される。最初の動機は、２つのvn.は、かなり低音で、柔らかくゆったりと動く。その後、後半の動機は高い音域のスタッカート。それぞれの動機は、vn.は弱音器をつけているが、音域、音色の対比が効果的。
メルツェンドルファーの演奏で、緩叙楽章は概して遅めのテンポは共通している。録音では、弦楽器の各パートのダイナミックレンジが狭いものの、近接音を中心とした弦の細かい音色が比較的良く分かる。冒頭の６小節までの２つのグループの対比が印象的。前半と後半の間をつなぐような、中間的な音域が余り見られない。楽章を通して常に、２つのグループを対比させている。スコアに指定はないようだが、前半のvn.の低い旋律を一番低いG線で常に演奏すると、さらに音色の対比が効果的かもしれないと思った。ハイドンの交響曲では、vn.の低音域をG線で引く箇所は余りないと思うが。
　第3楽章のバリオラージュも、他の指揮者と比較して、非開放弦と開放弦の微妙な音色の対比が良く分かる。Tiroが短調で極端にテンポを落とすので対照的。Ob.が前面に出る点は不満ではあるが、第2、3楽章に関しては意外な発見を提供していると思った。