ハイドン交響曲通しNo. 1-10

音楽聴取記録（交響曲の聴取　各曲の聴取記録　通しNo.82　　hob-No.80　　）
2024年1月17日　更新

通
No

Hob.
Nｏ.

通称名

作曲年

調性

楽
章
数

ｆｌ

ｆｇ

trp

timp

cmb

ランク

聴きどころ、ポイント

1782

(1)

第2楽章の前打音を含む主題と丁寧、かつ、しっとりとした雰囲気。

Alleglo　spiritoso

Adagio

Menuet＆trio

Finale,Presto

短調の交響曲は全体を通して少ないが、これ以降には、d調は作曲されていないので最後の曲となる。最初こそd‐molだが、直ぐに長調に転じており、長調の部分がむしろ多い。展開部は第2主題を中心に転調を繰り返すが、動機の展開よりも、両性と音色の対比に重点をおく。
　AdagioはBの調性であるが、両主題が印象的で低弦を中心とした対位法の扱いが、丁寧でうっとりとした雰囲気。第1主題の前打音の扱いの効果による影響か？　第2主題が2つのvnで提示された直後、低弦+木管の音色の対比が良い。ここから終結部にかけての細かい動きが聴き所となる。展開部は比較的短いが、2つの主題が丁寧に展開され、調性の変化にも富む。楽器の音色はsoloの箇所は思ったより少ないがその分、細かい。これから後の交響曲シリーズとかと異なり、分かりやすい構成ながらも、丁寧に、しっとりと聴かせてくれる聴き応えのある緩徐楽章の一つ。
　フィッシャー盤ではFinaleの提示部を中心としたでｖｎ.の細かい演奏方法の違いが分かり面白い。この当たりは、小編成による効果が大きいと思う。Prestoのテンポではあるが、随所にややゆっくりした箇所もあり、ユーモアの雰囲気もあるが、展開部を中心に変化が大きい。全体を聴き通すと、終楽章の第2楽章の主題の美しさと展開がポイント。
　ドラティ盤は、緩徐楽章の提示部での繰り返しがないため、演奏時間は短い（演奏時間はフィッシャーの8:55に対して、6:52）　第2楽章の細かい楽器の音色が分かりにくく、対比がはっきりしない。フィッシャー盤を勧める。

（2010年1月4日追記　タグとして2010年2月12日とする）

2010年2月20日　NHK　FM放送の番組「吉田秀和　ハイドンその生涯と音楽」にて、オルフェウス室内管弦楽団の演奏を聴取。曲の紹介の前に、エステルハージ候への最後の交響曲であること。また、モーツァルトがこの曲に興味をもっていたことなどに言及。第1楽章は調性が　d　という短調であるものの、第2楽章以降は、調性が大きく異なること。また、構成や雰囲気などが、とても対比的であることは、約10年余り前とはガラリと変わっている点にも触れている。
　演奏はフィッシャー盤と多く異なる点は余りないと見受けられた。しかし、1楽章の鋭い音色から、一気に第2楽章の穏やかな調性の変化に伴い、音色の対比が、象的だと思った。

2016年5月２８日　ダントーネ／アッカデーミア・ビザンティーナNo.80を聴取。緩除楽章で、繰り返しを忠実に守っての装飾や、テンポの微妙な変化などを特徴しているのが、ダントーネ。No.７９に引き続いてこのNo.80の緩除楽章でも存分に発揮。繰り返しを忠実に守っているので、第2楽章の演奏時間は10：48にも渡っている。全曲の半分は占めているであろう。
この第2楽章の繰り返しを忠実に守ると、聴取者には飽きが来るかもしれない。しかしながら、T20のfl.T57のob、のトリルなど、後半では微妙に変化をさせている。この楽章自体、ハイドンには珍しく、No.79と同様に様々な主題や動機とその展開が多い。しかし飽きさせない。
　　弦楽器で弦の第2vn.を含む各パートが、鮮明に位置して効果的。特にFinaleのT145から続く第2vn.が分かれた持続的な旋律は、一瞬だが右側から強烈に残り、他の演奏とは大きく異なる。２つのvn.パートを分けた効果がある。弦楽器でもし、ゴバーマンがこの部分を演奏していたら、モダン楽器の第2vn.のビブラートのかかった艶のある音色だったかもしれない。それに対してダントーネは古楽器であるため、音色は対照的。hr.が必要に応じて、　f　で強烈にアクセントをつけて鳴らすので、打楽器群がなくても、それなりに迫力はある。スコアを見ながらはこの当たりの醍醐味が分かってくる。逆にどちらかといえば通好みであることを再認識。

2018年6月3日　ヘルムート　ミュラー＝ブリュール　ケルン室内管弦楽団No.80を聴取。このCDは、他にNo.81とNo.99が収録されているのでNo.80から聴取。No.41.58.59を以前にも聴取したが、録音は同じ様な感じ。(下記の自分の記事を参照)すなわち、奥行き感がやや不足。

もともとこの曲自体が、d‐molの調性の割には、No.83やNo.95と同様に、長調に転じる箇所が多い。テンポは概して中庸。第2楽章は、ハイドンにしては、割合に様々な動機が多く登場。楽章全体の統一感には今ひとつかけるが、その分演奏時間がこの曲でも8：15に渡る。(さすがに後半の繰り返しは採用せず)展開部の真ん中当たりでのT51の部分。p　の指示からか第12vn.はsoloで引いているようだ。フィッシャーなども良くこの方法がある。
シンコペーションのリズムが多いFinaleでは、展開部と再現部の繰り返しの採用がないのは他の指揮者と同様。

2018年12月17日　80番　　ニコラス・マギーガン　　フィルハーモニア・バロック管弦楽団　を聴取。第2楽章の展開部当たりで、過去のブログ（ヘルムート　ミュラー＝ブリュール　ケルン室内管弦楽団）で、soloで引いている箇所を指摘した。この演奏では、通常通り。

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-919.html

　独特の動機とリズムが様々に展開していくFinaleは大半の指揮者は、展開部と再現部の繰り返しを採用しないことが多い。しかしマギーガンは繰り返しを採用。元々この楽章は展開部で擬似再現のような箇所があったり、様々な仕掛けがあると思う。そもそも、このFinaleの最後の部分は２小節の休止がある。後半の繰り返しを採用した場合、２小節の休止を挟んで再開することになる。No.90のFinaleの様に、作曲者が仕掛けを楽しんでいる雰囲気。繰り返しがあっても、展開部と再現部は提示部と大きく異なる箇所が多く、バラエテイに富んだFinaleを満喫できると思う。No.90のFinaleの繰り返しの面白いが、この演奏を聞いて仕掛けがさらに興味を持った。

2019年1月5日　80番　ニコラス・クレーマー（Nicholas Kraemer）指揮のBBCフィルハーモニック（BBC Philharmonic）を聴取。このCDは4曲がセットになっている。2番目のNo.26は同じ　d-mol　だが3楽章で終わり。冒頭からシンコペーションの主題が印象的。一方こちらは同じ調性で、Finale　冒頭の第1主題のシンコペーションのリズム。このリズムが次第に変化しながら、No.26の類似した旋律に帰着していく部分が興味深い。Finale　提示部の繰り返しは採用。
　スコアでは展開部と再現部の繰り返しがある。この繰り返しをもし、採用すると、最後の部分で２小節余りの休止の部分を経てから、展開部の最初の部分に回帰する。ライブの演奏では得てして、繰り返しを省略することが多い。この演奏も繰り返しを採用せず。スコアでは2小節余りの休止を挟んで終了となる。しかしこの演奏ではd-durの主和音で明るく終了し直ぐに拍手になる。恐らく指揮者は直ぐに演奏が終わると、指揮棒をおろしたのであろう。繰り返しを採用するうかどうか。No.90のFinaleの様な仕掛けは余りない。この当たりはライブならではの面白さがある。
　４曲を通して聴いてみて、104曲余りのハイドンの交響曲をCD１枚にセットすることを考えたときNo.26とNo.80との関連性を旨く持たせていると思った。ライブならではの面白さを堪能できる。

2019年5月4日　エルンスト・メルツェンドルファー　ウィーン室内管弦楽団　80番を聴取。ハイドンの交響曲での魅力は、第1主題の冒頭の動機にある。序奏がない場合、最初に第1主題が登場する。この交響曲の第1主題は、主題の動機は、低弦とfg.がユニゾンで受け持ち、他のパートは和音あるいは伴奏に回る。このため、出だしの動機を低弦とfg.が旨くインパクトのある表現をすることが必要。少し前のNo.79は、c-molの短調だが、Tuittiでの開始とは対照的。No.78以上に低音域の主題を目立たせる必要がある。
　これには録音による影響も大きい。この演奏では残念ながら、ダイナミックレンジが狭く低弦を含めた分離が不足し歪も目立つ。なぜ、この様に差があるのか今まで余り気がつかなかった。このCDは23枚目で、１曲目はNo.78が最初に収録されている。同じアンプのボリュームに位置で、冒頭のNo.78とNo.80を再生してみた。No.78はレンジも割合に広く歪も余りない。
　一方、No.80の方は冒頭から録音レベルが明らかに低い。このためNo.78と同じ様に聴取しようとすると、アンプのボリュームを上げる必要がある。No.80の場合、No.74と違って、それぞれの楽章間での録音レベルの差は余りない。しかしNo.78と比較して、明らかに終始レベルが低い。またFinaleの後半に行くに従い、内周歪なのか、vn.を中心に高音域で歪が目立ってくる。珍しくFinaleは展開部と再現部の後半を反復している。反復部分の装飾などは特にない。同じスタイルで反復の後半も演奏しているが、さらに歪が増している。録音がかなり悪い方になってしまい全体的な印象が少ない。

2020年3月19日　80番　ジョヴァンニ・アントニーニ　カンマ―オーケストラバーゼル　を聴取。このシリーズでは第５集。ハイドン音盤倉庫に秀演の記述がある（下記のレビュー）

https://haydnrecarchive.blog.fc2.com/blog-entry-1619.html

また　クラッシック　クラシック音楽とリュート　にもレビューがある。(Youtubeのリンクがあるのは、ありがたい)

http://micha072.blog.fc2.com/blog-entry-1705.html

https://www.youtube.com/watch?v=jJEeu7r6GwA

第4集までは、イル・ジャルディーノ・アルモニコの奏者だったが、このシリーズから変わることになる。この違いは私には分からない。録音は今までと同様に近接音が多めであるが、指揮者の息使いまでわかるような鮮明な録音。奥行感や分離間、ダイナミックレンジも十分。

このシリーズは、CDの音源が元々よく、臨場感の良い録音が期待できる。上記のYoutubeは、CDよりはさすがに音質は下がる。しかしライブならではの臨場感が、とてもよく分かる。コンサートマスターを含めた、弦楽器の奏法などが適度にアップされていて、見ていても飽きることがない。MenuetのTrioの部分で、管楽器が主旋律を吹く部分。この時、弦楽器の音量を落とし伴奏に回る。弦楽器の弓の使い方で、音量を落とすために、弓の動く範囲を狭めているところなどがよく分かる。
ナチュラルホルンを使用し、複数のhr.があること。クルックの切り替えを含む動作。予備のhr.が普段は床に置いていたり、クルックの予備は譜面台にかけているなどの様子。指揮者や奏者の動きをアップするだけでなく、周囲の細かい動きまで撮影されている。CDだけだと映像がないため、この当たりは分からない。音質は下がってしまう分、ライブならではの良さがよく分かるのもありがたい。
　かなり以前だが、カラヤン指揮のベートーベンの交響曲を、テレビで視聴したことがある。ライブ録音ではなく奏者を階段状に立体的に並べて演奏していた。指揮者のアップが大半で、奏者の顔のアップは殆どない。コンサートホールのライブ録音とは、まったく思えない無機質な感じの印象を持った。これに対して、このYoutubeは、現代での小規模ながらもライブ演奏をうまくとらえていると思った。
なお、コンサートマスターの「笠井　友紀」について。(女性なのでコンサートミストレスだが)　少し古い(2013年アップ)データが下記のブログにﾌﾟロフィールなどが記載されている。CDのライナーノートにも、第1vn.の首席奏者として記載がされている。

https://dsolisten.exblog.jp/21420804/

CDのライナーノートの中ほどにあるカンマ―オーケストラバーゼルの奏者の集合写真について。この中には掲載されていないようだ。Youtubeでは指揮者と同じくらいの頻度でアップの画面が多いので、ついつい印象が高い方になる。
　第2vn.奏者が右側にいて身長が高いのが目立つ。それに対して本人は、それほど身長は高くないようだが。集合写真に本人は写りたくなかったのか。あるいは単に、タイミングが合わなかったのか少し気になった。

2023年5月20日　　80番　チャールズ　マッケラス　オーストラリア室内管弦楽団を聴取。この後にNo.81が収録されている。ライナーノートによると、弦の奏者の総数は14名で総勢35名と記載がある。モダン楽器を使用しているようだ。弦の配置は通常配置。通奏低音でcmb.が常時、入っている。繰り返しは忠実に採用。最近だとNo.80に関しては、対向配置のアントニーニの切れのある演奏が印象的だった。奏者の数は大差はなさそうだが。
　この演奏自体で、特に特徴となる印象は余りない。パリセットとザロモンセットの間にある、ある意味、間になり、しかも短調の交響曲。演奏機会が少ないほうだと思うが。トータルの奏者の数が大きくないが、
ただしライヴ的な雰囲気は余り感じない。この曲の最後のFinaleで展開部と再現部の後半は繰り返しの指示がある。スコアでは２小節余りの休止があって終了する。もしライヴ録音の場合、指揮者はどのように指揮棒を下すのか。この演奏では、録音会場は記載があるが、録音年月日のデータの記載がないのは残念。

80番　オルフェウス室内管弦楽団　2024年1月14日追記

2024年1月5日　No.81を聴取。No.63から引き続く。オルフェウスのCDは１枚に複数のCDが収録されているが、原則、通し番号のように作曲順番は、かいつまむように選曲されている。初期の頃のNo.22。オペラ時代のNo.63。３曲目の最後はパリセット直前の3曲セットの中の2番目のNo.80となっている。一般に、No.80を含む３曲は、No.79からNo.81のセットで録音されることが多い。一つ前のNo.76～78も３曲セットで出版されている。グッドマンの録音も３曲がセット。アントニーニも３曲セットでリリース予定。　
　ハイドンの交響曲は、緩徐楽章では後半になると変奏曲の形式が多くなる。その分、ソナタ形式が減っていく。ソナタ形式の良しあしは色々とあるかもしれないが、じっくり向き合う場合は好みにあう。疾風怒涛期の頃の時代と異なり、ある意味、分かりやすさ音色や強弱の変化が表に出やすい。一度、聞いてみても、すぐにツボというか音楽の面白さが分かりやすいかもしれない。
　スコアをみると、やはり細かい所でも意外な点が分かる。オルフェウス自体の演奏で、新たに、発見したかどうは分からない。vn.は対向配置でないので、vn.の細かいパートの動きはよく分からない。しかし管楽器の各パートはよくわかる。打楽器が入らないので、Finaleのtuittiの箇所なども迫力には多少かけるかもしれない。しかしその分、細かい箇所が聴き所となる。
　ハイドンは、初期の頃からシンコペーションの動機を多用して来た。この交響曲もFinaleの冒頭の動機などもシンコペーションが元になっている。第2楽章のT21の部分。第2vn.とva.に既にシンコペーションのリズムがある。それ以外にも各種の動機や、支える和音など、スコアをみると、各パートの動きがよくわかる。