音楽聴取記録(交響曲の聴取 各曲の聴取記録 通しNo.71 hob-No.74   
2022年10月30日 更新

No 
Hob.
No.
 
通称名   作曲年 調性   楽

 fl  fg trp  cl  timp   cmb ランク    聴きどころ、ポイント
74 71 1779 B 4 -  -  - - (1)
       1 B AdagioーAlleglo con brio
       2 F Adagio
       3 B Menuet
4 B ivace
第1楽章にAdagioの序奏が付く。主部のAllegloとは特に関係がなく、soloが入りながら曲全体の小手しらべの様な感じ。主部は大規模なソナタ形式だが、親しみのある主題と対旋律がNo.70と同様随所にある。特に第2主題は、カノン風に旋律が受け継がれて行く。展開部は、この頃の特徴のひとつとして第1主題の擬似再現がある。提示部、展開部を通じて、第1主題は前半の部分よりも、その後に続くコデッタ風の経過部が、重要な役割を担うようだ。
 No.53と同様に後から序奏が付加されたらしい。No.53の場合は、序奏がない場合、いきなり主部に来ると、少し拍子抜けの可能性がある。しかし、こちらのNo.71の方は、無理に序奏がなくても違和感はなさそう。
 Adagioは変奏曲。第1楽章では余り聴けなかった管の扱いが重視。この頃から、fl.とob.の持ち替えはなくなり、fl.とob.同士の掛け合いが多くなる。変奏曲であるが、ロンド風に主題の変化がなく帰ってくる箇所もあり。終わりの頃に変奏曲でありながらカデンツアがある。変奏自体に調性やテンポの変化は少ないが、各楽器の扱い方で音色の扱い方を中心に、聴かせてくれる。
 Finaleは大規模なソナタ形式。第2主題は管で提示されるが、提示部を中心に、管が主旋律を受け持つ箇所が目立つ。vc.とbass.の分離は見られないようだが、各弦の対位的な動きは、80-90番台と大きな隔たりはない。fg.を含む管の扱いが多く、明るく親しみのあるFinaleが、この曲の一番の特徴でないかと思った。曲全体が大衆にも分かりやすい雰囲気が伝わってくる。
 フィッシャーは随所にsoloが多くあり、soloの音が明快に聴こえる。それに対して、ドラティ盤はsoloの扱いが少ない。

(2010年1月3日追記 タグとして2010年2月4日とする)
2013年12月17日 デイビス盤を聴取。いつものCDプレーヤーが不調で他の機種で聴取。音のバランスや音色等が異なり、トーンコントロールで調整するものの、聴き慣れない雰囲気がある。ひとつ前のNo.70と同様に、70番代の特徴と言うべきか、同じ旋律をでも楽器を変えながら、音色の変化を楽しむ典型的な曲。前の曲と同様に、第1楽章はやや、ゆっくりめのテンポで終始。
 特に第2楽章は、前曲とも異なり調の変化が少なく、その分、楽器の扱い方は音色を重視している。これは、この3者の演奏でも同様。デイビス盤では、弦楽器のvc.、bass.fg.それぞれの音色が明白なため一層引き立つ。全楽器の第3楽章 trioの2つのvn.のsoloなどもその典型。finaleの最後に近くなってから、それまで余り活躍していなかたhr.が華を添えているのが、デイビス盤では目立つ。テンポを速めて爽快に流れるフィッシャー盤を勧める。
2016年3月13日 ホグウッドNo.71を聴取。vc.を含む楽器の音色の対比を重視した作品。ホグウッドでは弦楽器のパートがよく分かる。第1楽章のT43から第2主題がpで各楽器で受け渡しながら登場する。この部分でT49でvc.がbassと離れてかなり高い音域で演奏するが、古楽器のためか、独特な音色。
 第2楽章は、細かい音の典型。この楽章は、冒頭からvn.パートは弱音器を使用する。T41からの管楽器が受け持つ変奏の部分。管楽器はpの指示。弦の各パートは第2vn.以外はピチカート。第2vn.は32部音符の持続的な対旋律を伴う。この部分で、主旋律の p の管楽器に寄り添うように、第2vn.が鮮明に聴こえるのが印象的。この曲は、ハイドンとしては珍しく長い旋律で謡う様な個所が多く、しかも楽器の音色を随所で対比させている。古楽器で初めて聴くが、フラット系のB−durということもあり、全体的に落ち着いた雰囲気が堪能できる。
2018年6月16日 71番 ロイ・グッドマン ハノーヴァー・バンド を聴取。井上著「ハイドン106の交響曲を聴く」ではこの曲の記述として「オーケストレーションの独創性が少なからず見出され、非常に興味深いものがある」とある。グッドマンの演奏は、繰り返しを忠実に守ることもあり、演奏時間が32:57にもなっている。この演奏時間だとザロモンセットと同じぐらいになる。
 さて、この第1楽章は様々な動機が登場するが、No.83にも少し雰囲気が似ていると思う。すなわちNo.83は序奏こそないが様々な動機が登場し、展開部で生かされていること。No.71も同様に第1楽章の提示部で様々な動機が登場する。T53からの第2主題の経過動機?でva.→第2vn.→第1vn.に移行していく部分。再現部のT180からはvc.→va.→第2vn.→第1vn. と順番と調性を変えている。
 この部分はFinale 展開部のT62で少し類似した箇所がある。この動機がT62で少し登場し、T70でさらに第1楽章と似たような雰囲気になる。この動機は再現部では登場しないようだ。一体感のあるFinale冒頭の主題が、展開部の中で「ぽつん」と存在しているように感じる。その分、逆に冒頭主題が引き立っていると思う。



No.70と72でも記載をしたが録音の良さも手伝って、各パートの旋律が良く分かる。グッドマンの演奏は初めて聴取したが、共通した特徴として分離感がよいこと。ハイドンの交響曲では、各パートの分離のよさがある。また第2vn.は右側に明快に位置しているので、Tuitiでvn.を中心とした音の厚みも良いのが特徴のひとつ。また繰り返しを忠実に守るのも良い。他の曲も聴いてみたいと思った。
2019年4月26日 エルンスト・メルツェンドルファー ウィーン室内管弦楽団 71番を聴取。No.69、70と違って3番目になるNo.71は、オーケストレーションの独創性が見い出されると井上著にも記載されている。序奏の後の冒頭の動機から簡潔で、リズム感のある雰囲気。第1楽章だけに限らず様々な動機と旋律がsoloを含めていたる所に散りばられている雰囲気。指揮者や奏者によって、何度か比較しないと曲の面白さは分かり難い曲のひとつ。序奏ん最初からvc.とbass.の分離があるなど、オーケストラの手法に面白さが随所にある。
 疾風怒濤期のNo.47とこの第2楽章を比較してみると対比がしやすい。楽器編成もfl.が増える。低弦の分離も緩叙楽章こそないが、va.とvc.とは一体で動いていない。弦のピチカートの使用など、数年前のスタイルとはがらり変わる雰囲気。
 第3楽章 Menuet Trioの部分で、vn.の2名の奏者がsoloとなる。メルツェンドルファーの演奏では、No.6〜8のときは2名のsoloの奏者の位置ば不明瞭で、特に第2vn.の位置が右側に位置し、2つの弦のパートとの関係が離れていて不自然なことを記載した。しかしこの録音は2つのsoloは、やや離れた位置であるが左側に少し離れてバランスが良い。ピチカートで伴奏する2つのvn.パートとの溶け合いも良好。
Soloの箇所が多く、No.68と同様に視覚効果の高い曲だと思う。緩叙楽章こそ録音ではレンジが狭いが、他の楽章は録音も比較的良好。No.6〜8シリーズと違ってレンジも、ほどほど広く推薦したい。
 
 2019年10月3日 71番  B ドラホシュ Nicolaus Esterhazy Sinfoniaを聴取。一つ前のNo.70で、短いながらもFinaleの対位法的な圧倒的な締めくくりが印象に残る。第1〜3楽章まではFinaleに対して、全般的に対位法的な技巧が少なく、ゴツゴツした印象に終始。その分、最後のFinaleで一気に開花した曲からの印象で評価を上げた。
 同じ頃に作曲されたNo.71は井上著にも、「ハイドンのオーケストレーションの独創性が少なからず見いだせる」と記述がある。No.70と比較してsoloを含む弦の様々な音色、複数の管楽器の音色の対比など様々な聴き所がある。しかし一度、聞いただけではなかなかこの曲の面白みが分からない。全集以外だと、めったに取り上げられない曲の一つではあろう。
 序奏の後T8からの第1vn.の第1主題。スラーの下降する長い旋律と支える第2vn.以下の伴奏。8部音符のこの伴奏の動機は、わずかだが8部の休符がある。このずれが面白い。T8からT12までは弦のパートが分かれているが、T13では弦楽器(fg.を含む)の f でのTuittiとなる。Tuittiでの強弱の対比。T17での第1vn.のみでの動機の確保。T19での第1vn.の僅かな休符。T8からT19までの僅か11小節の間でも弦楽器だけで様々な工夫がある。一つ前のNo.70などとは比較にならないほど、弦楽器だけでも聴き所が散りばめられている。(少し前に記述したNo.67にも類似している)
以下のブログ

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-1238.html

ドラホシュの演奏では各パートが鮮明。その後の経過部で、新たな動機が登場する。(下記のブログに譜面あり)こここでも記載をしたが、この楽章に関してはNo.83のように、様々な動機がいたるところで登場するのが特徴。

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-933.html

この動機がFinaleの展開部で似たように登場する部分がある。この部分でもうまく表現。弦の奏者の数は少ないかもしれない。しかしR グッドマンのように vn.の対向配置を生かした表現の方に、さらに軍配を上げたい。R グッドマンの場合Finaleで展開部と再現部の繰り返しをしていた。一方、ドラホシュの場合は、繰り返しはなし。展開部T61からの第1楽章の類似箇所を再度聞けることも繰り返しがある分、少しマイナス材料と思った。
 2022年1月3日 71番 SWF交響楽団 hiroshio wakasugi  若杉 弘を聴取。

 No.39.とNo.44から引き続いてNo.71が3曲目。作曲年代も後なり作風が大きく変わる。同じオケでも指揮者が異なることもあり、ある意味比較が難い。テンポが全体的に概して遅めに終始。この第1楽章は、様々な動機が数多く登場し、各パートがコロコロを変わるようなスタイルなので、ある意味、収拾がつきにくい。指揮者によっては動機によって、強弱や音色に工夫の差をつけているような感じもあった。しかしこの演奏では、特に差が余りないようだ。
 第2楽章の変奏曲。第1vn.のテーマから、変奏曲に続いていく。管楽器のsoloの箇所が多く、弦楽器とのバランスをとるところも聴き所。第3または第4変奏のT61からの部分。2人のob.とfg.が入る箇所。vn.は抑えて、低弦とfg.が明瞭に入っている。前の2曲に比べると、レンジが多少狭いようだが、バランスは前の2曲とも同様に良い雰囲気。

 このCDに関して今一つ、なぜ同じオケでこのような組み合わせで発売されたのか、よく分からない。同じ指揮者とオケなら複数のハイドンの交響曲をある程度、まとめてあるいは、少しずつ発売されるのなら理解はできる。録音会場に南西ドイツ放送交響楽団 SWR ハンス=ロスバウト スタジオ の記載がある。SWRは、1950年代後半から60年代の初めにかけて、SWRの全身のオケでハイドンの交響曲を複数出している。SWRとしては、冠の存在のような ロスバウストに敬意を表して、他の指揮者の録音を控えていたのかもしれない。
 レーベルは日本盤でBMGとなっていて ARTE NOVA CLASSICS  880円(発売当時の定価) 全100タイトルとなっていた。ハイドンの交響曲このCD1枚のみ。SWRのオケは、このCD以外なないようだ。レーベルの意図もよくわからない。