音楽聴取記録(交響曲の聴取 各曲の聴取記録 通しNo.67 hob-No.63   
2024年1月17日 更新 

No 
Hob.
No.
 
通称名   作曲年 調性   楽

 fl  fg trp  cl  timp   cmb ランク    聴きどころ、ポイント
67 63 La Roxelane 1779 C 4 -  -  - - (1) C 実際の表記よりゆったりとしたテンポのFinale。
       1 C Alleglo
       2 c La Roxelane、Allegretto(o piu tosto allegro)
       3 C Menuet&trio
4 C Finale、Presto
エステルハーザ宮オペラ劇場の火災で、この頃に急遽、編曲して作曲したパステッチオ(継ぎはぎ)交響曲の一つ。最新名曲解説全集では、補完でNo.55とともに掲載されている。交響曲の誕生の経緯については、この補完の概説に詳細に記載されている。
 第1楽章は、歌劇「月の世界」の序曲からの転用。C調の明快な主題だが力強い。第2楽章は、類似しているが異なった調で2つの主題による変奏曲。No.53と同じ様な構成。各変奏は反復記号があったりなかったりで交互に扱われながら展開。
 第3楽章は、torioでob.とfg.のsoloを中心に展開。この頃からMenuetのtrioでは、各楽器に受け持たせることで楽器や音色の変化を重視している点は共通している。fg.のsoloがこの頃から取り入れているのは注目に値する。
 解説全集の記載によるとFinaleは2版ある。フィッシャー盤は第2版の方を採用。 CDジャケットの部分には、 Versione secondaと記載がされている。
 第4楽章は、テンポはPrestoとなっているが、中規模のソナタ形式で比較的テンポがゆっくり。提示部の長さは比較的短い。しかしそれに対して一般の第1楽章と同じ位に、提示部の各動機が細かく扱われ、各調で展開されるところは心地よい。再現部は比較的短いが聴取した実際のテンポがPresto程ではなく、Allegrettoに近いこともありじっくりと聴かせてくれる雰囲気。他の楽章がどちらかと言えば、あっさりとしたのと対照的。ただし第1版のFinaleをもし採用した場合はテンポがpretissimoとなり、全体を通して聴き通すと、ガラリと変わった印象になる可能性あり。
 ドラティ盤はFinaleも第2版を採用。各soloの扱いが少ない。ドラティ盤の補完として、終楽章を含む各楽章での第1版の演奏がある。楽器編成がtimp.が追加となっている。Menuetとtrioは第2版と主題自体が全く異なる。Finaleも第1版のもので主題はもちろん、テンポもpretissimoとなっている。表示はpretissimoだが実際には、ややゆったりとしたテンポ。第1版と演奏時間は大差がない。ソナタ形式だが比較的長い提示部の中にも、展開的な要素がある。第1版では楽器がtimp.とtrp.が追加。trp.がかなりの高音域まで扱っていることもあり第2版と比較して、華やかな雰囲気。
(2020年1月1日追記 タグとして2011年1月27日とする)
(追記)2009年12月5日 NHK FM放送 「名曲の楽しみ ハイドン その生涯と音楽 吉田秀和」を聴取。曲が成立した経過などは、解説全集とほぼ同じ。当時は、かなり人気のあった曲であるが、近年は余り演奏されない交響曲のひとつとしても紹介。演奏はオルフェウス室内合奏団。第2楽章は特に人気があり実際に聴き所が多い点も強調。
 これまで聴いて来た同合奏団の演奏は古楽器が中心だった。第2楽章以外は、スケールや華やかさがあるのかモダン楽器と比較すると、わずかに「くすん」でいる音色。しかしそれに対して第2楽章は、落ち着いた雰囲気をベースに、管の音色がとても曲想にあっている雰囲気。特にfl.の柔らかい音色は魅力的。第2楽章だけを取り上げたら、フィッシャー、ドラティよりも、お勧めとしたい。なおMenuetのtrioでは、ob.のsoloの部分で装飾音が追加となっている。
2013年10月12日 デイビス盤を聴取。例によって比較的ゆったりとしたテンポを忠実に守っている。第1楽章 展開部 T128から、fg.がsoloで入ってくる箇所がある。それまで余り目立たなかったfg.が意外にも、ここでは活躍。第2楽章はデイビス盤では、意外にも速いテンポ。Finaleはfl.が入る第2版を採用。
 この頃から緩徐楽章を中心とした変奏曲が、後期に向けて入って来る。1770年代の後半になる位置づけ。少し前の1770年頃以前と比較すると、聴衆向けに分かりやすさへシフトして行ったのが明白になる。特に最近、hob-no.-44を聞いた直後から、この曲を続けて聴くと、調生の変化は元より、曲のスタイルがガラリと変わった印象。
2016年2月25日 ホグウッドNo.63を聴取。No.61から引き続く。ライナーノートでは当時の演奏スタイルで準じている。1780年代の作曲年代に相当すると、最大24名となっている。通し番号一つ前のNo.61よりも、弦の編成数が多いように聴こえる。楽器編成は trp. timp.が入っている。
Finaleは第2版 Prestoの方を採用。弦のプルト数が増えていても、各パートが明白に聴こえるのがホグウッドの特徴。T82の第1vn.の動機が、すぐにT83のva.に引き継がれる。T97の低弦T98第2vn.など、細かいパートの音が明瞭に聴こえ透明感が高いのが特徴。
2018年10月11日 63番 ニコラス ウオード The Northern Chamber Orchestra を聴取。第1楽章はfg.が単独で入る箇所があり。第2版の方と思う。No.55では、緩叙楽章で聴衆へ、突然、大音量で驚かせる箇所がある。これに伴い、聴衆への迎合について記載をした。この楽章は、2つの主題、しかも類似している短調と長調の2つの主題交互に提示、変奏され進んでいく。繰り返しが殆どあり丁度、少し後に作曲されたNo.53の第2楽章にも類似した雰囲気。ウオード独自の特徴は、余り見出せない。
 緩徐楽章に関して追加を記載したい。疾風怒濤期の頃の緩叙楽章は、他の時期と比べて、冒頭の第1楽章楽章と同様に丁寧に書かれていると思う。初期の頃の緩叙楽章は第1楽章に続いて調性とテンポを変え、finaleに向けてのブリッジの様な雰囲気が多い。しかし疾風怒濤期の時期は、丁寧に作曲されていて、単独で取り上げても価値が高いと思う。その中のNo.47は、特筆に価すると思う。No.47は繰り返しがないが、全て変奏曲で書かれ主題から派生しての変形、転調、各パートへの受け渡しなど変化に富んでいる。
 その後No.55でも、緩叙楽章は、No.55にも少し記載をしたが、聴衆への迎合が少しずつ入ってきた雰囲気。このNo.63ではNo.53と同様に、余り大きな転調や曲想の変化、各パートでの独自の動きなどが少なくなっている。迎合のための分かりやすさが前面に出てきているのが良く分かる曲のひとつ。
2019年4月19日 エルンスト・メルツェンドルファー ウィーン室内管弦楽団 63番を聴取。冒頭から弦楽器のTuittiで開始するが、当初からダイナミックレンジが狭くスクラッチノイズも目立つ。T28で一旦、半終始をした後T29で再度、弦楽器以外に打楽器群を含むTuittiで再度、登場する。残念なことに、そのひとつ前のT28の部分で、LPレコード特有のノイズが入ってしまう。すなわち、T29のTuittiの音が左側の端の方に、先行して僅かではあるが既に聴こえてしまう。
過去に所有していたLPは、殆ど手放してしまった。しかしかつてのLPの録音で、ひとつ前の溝の音が、先行して左側を中心にノイズが入ってしまう欠点がある。今はCDの時代で、スクラッチノイズのことも気にしないで聞ける。元々、メルツェンドルファーの演奏はテープではなくLPからの再生をCD化したもの。オリジナルのLPの音源と再生機器によっては、この様な欠点が入る可能性がある。ここまで聴き通してきた中では、この現象はなかった。数日前にCDプレーヤーを換えたこともあり、より一層、細かい音まで聴こえているかも。この様な現象まで、自分の聴取している環境が分からなかった可能性もある。
 隣の溝が先行して聴こえてしまう現象はかつて自分が所有していた、R ケンペ のブルックナー 交響曲 第5番の Finale。提示部の小結尾部の部分で柔らかい第2主題が提示されて、消えるように一旦終わる部分。この直後に、変形されたコラール風の第1主題がTuittiで登場する。この直前の音が、第1vn.の端の左の方で、聴こえていた記憶がある。

第3楽章と第4楽章は打楽器群が入らない2つの別バージョンも収録されている。こちらの方は、最初の版と違って打楽器群は入らないので少しレンジ狭くてもよいかもしれない。しかし最初の版以上に、内周歪のためかレンジが狭く、左右の揺らぎやノイズの切れ目なども入っている。録音の点でメルツェンドルファーの演奏は、推薦できないひとつ。
  2019年6月13日 63番 N マリナー を聴取。モダン楽器で小編成。少し前にメルツェンドルファーのときに、プレエコーでランクを落とした経緯がある。こちらの方は、録音は良好。ライブ録音ではないと思うが、ライナーノートによると、No.60と同じ頃の1989年5月になっている。
演奏自体は、各パートの扱いは、比較的鮮明。他の指揮者も同様な解釈が多いが、弦と管とのユニゾンの箇所でも、必要に応じて管楽器のsoloの箇所を目立たせている。疾風怒濤期の頃と違い、緩叙楽章は2つの主題から、比較的わかりやすい変奏曲。冒頭から2つのvn.は弱音器をつけている。T107からvn.は弱音器を外している。T98から一旦終始し、T107までの間に弱音器は外す部分がある。普段は余り、この外す音などが聴こえにくい。しかし以外にも僅かではあるが、外している音が入っている。これが逆に良い臨場感になっていると思った。なお、Finaleは第1番のpretissiomの方だ、思ったよりテンポは速くない。
 2020年5月4日 63番 ジョヴァンニ・アントニーニ イル・ジャルディーノ・アルモニコ を聴取。第8集の1曲目。2020年5月の時点で、最新のもの。下記のブログにも例によって、キレの良いレビューが記載されれている。また、タイトルの元となるバルトークの作品を含めた関連コメントあり。

https://haydnrecarchive.blog.fc2.com/blog-entry-1858.html

最近、この指揮者と奏者はYuoutubeでも視聴する機会がある。現時点ではYoutubeでの映像はないようだ。ライナーノートに、奏者の氏名、人数、使用楽器などの詳細なデータが記載されている。弦の奏者数は下記の通り。中期の交響曲を意識して奏者の数が多くなっている。
6:5:5:3:2

No.65は数種の版があるが、この演奏ではfl.が入るバージョン。第1楽章はもともともとオペラ序曲だったこともあり華やかな雰囲気。
元々、弦のキレの良さは何度も記載をしてきた。キレが対比されるのは主にTuittiや強奏の部分かもしれない。それとは対照的に、弱音でスラーの部分。ハイドン以外でも多くの作曲家がソナタ形式で2つの主題を対比させることが多い。この曲の第1楽章でも同様。T44からの第1vn.のやわらかな旋律。弦のキレの対比も効果的。
第2楽章の終わりの方で、T99から第1、2 vn.弱音器を外す。その後の音色とともに強弱の対比も効果的。N マリナー 盤では、T99で弱音器を外す音が入っていた。こちらの方は、余り聞こえてこない。アントニーニの演奏は、弱音器使用の有無で音量の差は、マリナーほど大きくはない。録音によるかもしれないが、弱音器をつけても、そこそこ音量は大きいようだ。

 2020年10月24日B スピルナー Heidelberger Sinfoniker No.63を聴取。2018年録音の新譜。T ファイの後継者として録音を継続中。このCDではこの曲以外に計4曲が収録。CDの収録順番に聴取する。No.63は最近では アントニーニの古楽器によるキレの良さが印象的だった。No.63は各種の版があり、このCDでは多くの指揮者が採用しているfl.の入るバージョン。ライナーノートによると弦の奏者が下記の通り。
4:4:3:2:1 
弦楽器は従来通りでvn.は対向配置。Va.は右側に位置している。ファイを含めたこのシリーズは、ヘッドホンで聞くとアントニーニ以上に、指揮者の位置で聴いている録音。左右のvn.は対向配置を生かしているのはもちろん、すぐそばの手前から聞こえてくるような近接した雰囲気。右側のva.は第2vn.よりも少し奥側にあるのもよく分かる。
 演奏自体は、T ファイ の解釈と同じように私には聞こえその差が私には分かりがたい。テンポを必要に微妙に変え弱奏の部分は必要に応じてsoloになる。繰り返しの後半は、多くの指揮者が採用しているように微妙な装飾音を加えているのは同様。
 
No.63は、オペラの序曲からの転用や、楽器編成が様々で全く異なる版に異なる第3.4楽章があるなど、スコアによって差があるようだ。たまたま手持ちにあるスコアを見てみると、第1楽章でも楽器のパートによって、微妙に異なるようにも聞こえる。たとえば第1楽章の小結尾分のT56からの部分。ここでは vn.は異なる旋律を引いている。再現部の類似箇所のT159の部分。同じような箇所で、スコアでは2つのvn.は同じ音程のユニゾンになっている。しかしこのCDでは提示部と同じように、第1vn.は管楽器と同じ旋律で提示部と同じように演奏していると思う。
 第2楽章の T99から、vn.の弱音器を外す箇所がある。N マリナーの演奏では、ライブでないものの、この短い箇所で奏者が弱音器を外す音が小さいながらも入っていた。しかし他の指揮者と同様に、スピルナーの指揮では、この音は入っていない。
 No.63は全く別なバージョンのFinaleもある。こちらの方は、通常通り採用される活気のあるFinale。今までは余りこのFinaleの、テンポというか微妙な少し引きずるような雰囲気について余り分からなかった。たまたまかもしれないがこのCDを聴取してみて、休符を生かした微妙なテンポの変化に気づく。T20からの部分は2つのvn.が8分休符を挟んで、掛け合う様に引いている。どこかでこの様な印象があると思い出した。その箇所はNo.21.のFinale。
下記のアドレスにNo.21 Finaleのスコアの一部の表示

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-1042.html

調性は異なるが、No.21はFinaleの冒頭から第1主題の旋律として採用され、微妙なズレが堪能できる。No.63は、経過的な旋律としてしか採用されていないが、T20の動機は展開部でも活用されている。同じFinaleの別バージョンと比較すると、こちらの方が興味がある。ちょうどNo.53の数種あるFinaleでどの版を選ぶのかと同じような雰囲気。
概して録音の良さもあって、弦楽器の音の分離間が明白なのは、やはり聞いていてありがたい。モーツァルトと違って弦を中心に各パートの旋律の差、強弱を含めたユニゾンやTuittiでの音の差を楽しむのがハイドンの面白さであると思う。この録音を通して改めて、音の分離や溶け合いなどが堪能できると思った。





 2021年11月18日 63番 ジョヴァンニ・アントニーニ 、 イル・ジャルディーノ・アルモニコ Yotubeを視聴。

Youtubeの下記のアドレスにアップされていた。周囲の観客の服装なども見ると、当日に複数の曲目が演奏され、その中の1曲だと思われる。音源自体はCDですでに聴取しているので、映像とは余り差は分かりにくい。

https://www.youtube.com/watch?v=EdREpLf7Eoo

 一番、興味があったのは第2楽章の部分。CDでは、下記の自分のブログでvn.が弱音器を後半で外すこと。Tuittiでの 弱音と強音との差が余り感じられないと記載した。(下記のアドレス)


http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-1321.html

 ところが映像で見ると、最初から第2楽章は弱音器を2つのvn.は外しているようだ。T98からT108までの間で弱音器を外す必要がない。このためT99からそのままvn.は特に弱音器使用することもなくT108の強音に入っていく。(下記の譜例のT108から)


 第2楽章の冒頭からT108は、殆ど、vn.は弱奏に終始する。弱音器は使用しないが、あたかも使用しているような繊細な音色になっている。微妙な音色を表現していることが、映像を通してさらに分かった。

 63番 オルフェウス室内管弦楽団 2024年1月13日追記

2024年1月3日 No.63を聴取。No.22から引き続く。自分のレビューを見て見たら、「ハイドンその生涯と音楽」のFM放送で、この曲が紹介されていた。

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-859.html

上記のレビューでは、第2楽章で古楽器のくすんだ音色が特徴と記載した。当時の聴取はFM放送だったので、同じ音源でもFM放送の分、録音が劣り、ここまでの違いをよく分かったものだと思う。
 改めて、CDでオリジナルの音源を聴いてみても、第2楽章のくすんだ印象は同様。No.63は、各種の版があるが、第2版なので打楽器群が入っていない。このため柔らかい雰囲気が主体となる。