ハイドン交響曲通しNo. 1-10

音楽聴取記録（交響曲の聴取　各曲の聴取記録　通しNo.35　hob-No24）
2024年2月22日　更新

通
No

Hob.
Nｏ.

通称名

作曲年

調性

楽
章
数

ｆｌ

ｆｇ

trp

cl

timp

cmb

ランク

聴きどころ、ポイント

35

24

1764

D

4

-

1

-

-

-

(1)

B

初めて主調とは異なる短調の再現による効果。

1

D

Alleglo

2

G

Adagio

3

D

Menuet

4

D

Alleglo

第1楽章の主題は単純だが、経過部から終結部にかけての盛り上がりに目を見張る。再現部では短調で第1主題が再現するが、経過部から主調に戻り再現部と同様に、盛り上がりに迫力がある。短調の再現が旨い効果を上げている。(モーツァルトの初期の交響曲には見られる）
　第2楽章は、あたかもfl.ソナタに近い。再現部の最後に近いところで、fl.のカデンツアがある。Menuetは一瞬だが強奏の中にvn.のピチカートがある。
　第4楽章は最初は強奏で始まらない。しかしその後の盛り上がりや、低弦とvn,を同じ旋律で、しっかり聴かせる方法などはモーツァルトのパリ交響曲第1楽章にも、それとなく似ている。全般的にどの楽章でも均整が取れていて中期の作品に近いと思われる。この頃の作品としては、いたるところに、じっくり聴かせてくれる箇所が随所にあり、何度聴いても意外な発見がある推薦作品。
　ドラティ盤はsoloが余り目立たない。第2楽章のfl.のカデンツアは、フィッシャーより別で長いものになっている。
（2019年12月30日追記　タグとして2010年12月24日とする）

2010年12月27日　ディビス盤を聴取。Allegloの再現部は短調で出現し、経過部からcodaにかけて盛り上がりを見せるのは、フィッシャー盤よりもやや控え目。この演奏を聴いて逆にフィッシャー盤の盛り上がりの良さが引き立つ。
　第2楽章は、あたかもfl.の独壇場。後半のカデンツアはフィッシャー盤と類似している。

2011年3月27日　スコアを見ながら3者の演奏を聴取。Allegloの第1主題は、ob．の高音域の方が担当。弦は伴奏に徹している。スコアでは第1vn　.2vn.の1拍目は「ｆ」　の表示だが、すぐに「ｐ」　の指示になっている。第1主題を引き立てるためか、3者の演奏はob．の旋律を引き立てるようにしている。提示部36小節に対して展開部は、ほぼ同じ長さの28小節。ほぼ同じ様な旋律が経過的にめまぐるしく転調を繰り返す。再現部はd調の再現。この直前は休止符がフェルマータで記載してある。ここまでは休止符は、提示部の終わりのみで切れ目がなく演奏。フェルマータの区切りで曲調が、がらりと変わるのは、とても良いタイミングであると思った。再現部での盛り上がる要因として強弱の工夫があると思う。第1主題「ｆ」　再現部「ｐ｣、第2主題「ｐ」再現部「ｆ」。各主題がそれぞれ強弱が異なっている。
　　Menuetで主部はob．はあるがfl．の登場はなし。trioでfl.が登場するが持ち替えは難しいと推定。Finaleの展開部の終わりは、bass.とｖｃ.が分離。va.と同じ音程であるがvc.が目立つように演奏。井上著では、エステルハージ楽団の目覚しい技術と管と弦の調和が見事で記載がある。特に第1楽章とFinaleの管と弦との調和は、明るい調性とも合い間って見事であると思う。
　ドラティ盤はAllegloとFinaleの後半の繰り返しはなし。Andanteのfl.のカデンツアは3者と異なる。

2012 年３月１日追記。第１楽章は主調による再現でなく、短調による再現は、特記すべき特徴だと前にも記載をした。石多著「交響曲の生涯」では、これ以外の交響曲を含めて調性の変化について多く言及している。
　この交響曲でも、私は大きな特徴であると思っていた。しかしながらこの短調による再現が全く記載がないのは意外である。

2011年12月28日　あらためてデイビス盤とフィッシャー盤を聴取。最初に、デイビス盤を聴取する。比較的全体的にゆっくりめのテンポであるが、この曲でも同様。フィッシャー盤では速めのテンポの第1楽章で、強弱の対比がすばらしいと記載したのは前記したとおり。デイビス盤のテンポの違いはもちろんであるが、強弱の対比がさらにあって聴き所がある。提示部３６小節、展開部２４小節、再現部２８小節。全体で８８小節しかない。しかし短い各部分で実にコンパクトにまとめられていて飽きさせない。
　第2楽章以降もsolo楽器の活用。第３楽章Menuetとtiroの対比。Finaleのコンパクトにまとめたエネルギッシュな展開。実にコンパクトにまとめられた交響曲であると再度、認識する。
　少し遡って同じD調のhob－no－１の最初の交響曲の第1楽章Prestoを見直す。こちらはほぼ同じ小節数の８６小節。こちらと比較するとわずか２小節、足りないのみ。しかしながら調性のめまぐるしい変化、楽器の使い方（冒頭の管楽器による主題提示など）、強弱の扱い方などを比較してみる。作曲年代はわずか4－5年程度の差と推定されるが著しい展開がある。
　なお、この当たりのhob-noー21～24は自筆楽譜が存在し、作曲年代が確定している。No.1は1757年前後であると思うので、この当たりとの時代の開きは約5～6年となる。

　2013年4月4日　追記　
中野著　ハイドン復活によると、第1楽章の分類方法で、この交響曲のAllegloの主題が引用されている。この本によれば第1楽章は、５つのタイプに分類されていて、「短い動機の反復による主題」の例として掲載。
　確かに、この第1主題は僅か1小節で短い動機よりなっている。この短い動機のタイプで、有名なのはhob－No.-88（俗称　V字）がある。こちらの方は、まさに明確な短い動機の典型で展開部にも、めまぐるしい転調がある。
　それに対してこちらのNo.25も、やはり展開部の転調はめまぐるしい。No.88の先駆けを意識させる交響曲と考えたい。

2013年4月3日　追記。ホグウッド盤を聴取。Allegloの持続音をバックにしながら、弦が盛り上がって行く雰囲気が第1の特徴と思う。こちらの演奏は思ったより、こじんまりとした演奏。再現部で短調で第1主題が戻ってくるが、伴奏の第2vn.が寄り添う雰囲気で響くのが印象的。

2015年３月20日　追記。ゴバーマン盤を聴取。No.21から引き続いて聴取すると、この曲の特徴が良く分かる。自筆楽譜が存在し比較的まとめて作曲されている。2つのvn.パートの細かい動きが良く分かる。こちらの曲は、第1楽章Ｔ27から第２vn.が分かれ始め、T31から第１vn.が華やかさを増す。Ｔ44 から、同じ動機がめまぐるしく転調していく部分は、逆に弦４部がほぼ同じ動きをしていくが左右一杯に広がるエネルギッシュな雰囲気。T61のd-molによる「p｣の2つのvn.による再現。これがT62から次第に分かれ始める。ホグウッド盤では、2つのvn.パートが良く分かるが、ゴバーマンではさらにはっきりと分かる。（下図参照）

　Adagio　はfl.ソナタに近いが、音源が不安定な箇所がありノイズも目立つ。元々の音源によるものか？　Finaleも主として各パートが分かれて、あるいは寄り添って動くのが良く分かる。No.21から24までは同じ時期に作曲されているので、できるだけまとめて聴取すると、共通点する点と共通しない点は逆にその差が分かりやすい。
　ゴバーマンでは楽器の分離が良く分かる。それに対して管楽器と弦楽器のユニゾンの効果が余り分からなかった。この曲も録音のためか、かなり管楽器のパートが広がり過ぎて、音の溶け合うユニゾンによる聴き所が少ない。録音がもう少し良かったら曲のランクを上げたいが。Bランクとしているが録音の分、少し下げざるを得ず。

2019年3月14日　エルンスト・メルツェンドルファー　ウィーン室内管弦楽団　 24番を聴取。通しNo.6番目　No.27でob.が目立つ点について最初に記載をした。その後、曲によっては目立つのもある。この曲もそのひとつで冒頭から、ob.が目立ち弦が曲がほぼ控えめに終始。展開部で2つのbass.が16分音符のトレモロで演奏する部分がある。再現部の短調による登場の前に当たり緊張感が欲しいところ。ここでもob.が目立ちすぎて違和感がある。
　　第2楽章のfl.のsoloもNo.6～8のときと同様に目立ちすぎ。ダイナニックレンジも狭い方で印象は低い。なお、このCDの裏面には、fl.の奏者名が記載されていない。

2019年8月14日　24番　ニコラス　ウオード　 The Northern Chamber Orchestra　を聴取。このオケはNCOの略称になっていて、指揮者とコンサートマスターが兼ねているようだ。下記のホームページを見ると、vn.の奏者は７名。（コンサートマスターを含む）vn.は通常配置の様なので、第1vn.：４．第2vn.　３名と思われる。

https://www.ncorch.co.uk/about-us/members/

初期のハイドンの交響曲は、cmb.は必要に応じて指揮者の解釈で入ることが多い。D　R　デイビス　は、殆ど全ての曲でcmb.が入っている。ウオードの場合は曲によっては、入っているかもしれない。この曲も最初から入っているが余り目立たない。元々、打楽器群が入らない曲であるが、明るい調性で、冒頭から管楽器で主題が登場。一方、弦楽器群は和音あるいは伴奏側になっているのか、余り目立たない。Tuittiでもcmb.は余り目立たず。vn.の奏者は、前記したように7名で少ないと思われるが、Tuittiでの音の厚みがcmb.が目立たなくても結構、弦の厚みがある。
　第1楽章でTuittiの厚みのあるのとは対照的に、第2楽章では管楽器のob.が休み、１名のfl.に変わる。冒頭かこの楽章はcmb.(右側の端)が、結構装飾を含めて入っている。第1楽章と比較して、音色と強弱の対比が印象的。
　現代のオケだと、ob.とfl.のこの曲の持ち替えは、第2楽章ではないかもしれない。しかし初演当時のエルテルハージ楽団では、恐らくob.奏者がこの曲に関しては、第2楽章に入るところで持ち替えではないかと思う。
第１と第2楽章の間は、多少の合間があるので、同一奏者による持ち替えは可能と思う。第3楽章で、もし同じ奏者の持ち替えがあった場合、Menuet からTrioの箇所で生じる。この間は殆ど、間合いはない。実際に持ち替えたのかどうか、初演当時は気になるところ。過去から様々な指揮者を聴取してきた中で、ウオード盤だけとは限らないが、初演当時この短い間に持ち替えていたのかどうか少し気になった。

24番　ジョヴァンニ・アントニーニBasel室内管弦楽団　

2022年3月2日　24番　ジョヴァンニ・アントニーニBasel室内管弦楽団を聴取。
前の２曲から作曲年代が遡ることもあり弦の編成も下記のように減っている。

6：5：4：3：2
ハイドンのFinaleは、形式一つをとっても様々にある。曲想もNo.82のように、最後に盛り上がりを持ってくるのもあれば軽く、しゃれたように終わるなどタイプも様々。このCDでは音量の対比がテーマになっているためか、各楽章の開始の音調の差も興味深い。No.82では、最初の第1曲ということもあり冒頭の大音量に注意と記述した。No.82のFinaleの開始は、弱奏で始まり、最後にエネルギッシュに終わる。弱奏での開始もtimp.の効果的な使用を含めた記載をした。　
　No.87もFinaleｎ冒頭は弱奏で始まる。曲によっては演奏時間が短く、繰り返しがあっても、すぐに終わってしまうケースもある。この曲もその一つかもしれない。前半と後半の繰り返しを全て採用しても、この演奏の時間でも4：26。　Finaleの小節数は下記の通り。

提示部：34、展開部：26、再現部：24　計84小節

再現部はcodaもなく、展開部と再現部で、繰り返しの後半で多少の装飾はある。しかし概して、これと行った特徴は余り分からないもしれない。作曲年は1764年で（自筆楽譜存在で確定済）　初期の頃よりは約6年は経過している。最初期の頃と比較するとFinale　一つでも単一の動機ではなく、複数の動機が対位法的に存在。複数の動機も各パートで受け継がれている。しかし速いテンポで流れるため、これらの細かい部分は、一度聞いただけでは分かり難い。様々な奏者で比較することで、この違いが分かると思う。
　Finaleの冒頭の第1vn.の第1動機。それに続くT9からの休止符を挟む動機。T12からの長い２部音符の動機。この３つの動機が展開部では、全て、登場し、調性やパートが分かれて登場する。展開部最後のbass.から分離したvc.の音色も印象的。No.87にも引き続いて、指揮者は、tuittiの手前で強奏となる部分は、身振りで体を動かしている音も存分に入っている。ハイドンだけとは限らないが、曲の最後は盛大に終わるFinale。その最初は、大半は、弱奏から始まっているのではないか？　弱奏から開始するからこそ、曲の最後に盛り上がりとの対比になる。

2023年12月25日　24番　ジョヴァンニ・アントニーニBasel室内管弦楽団　 Youtube　を視聴。No.87から引き続く。下記のサイトに収録されていた。指揮者と奏者は同じ。https://www.youtube.com/watch?v=O3TqO5-BoPc録音会場が異なるためか、Youtube　の音源は、やや残響が多い雰囲気。収録日はNo.87と同じ。パリセット時代と異なり作曲年代はかなり遡る。奏者の数はパリセットと同じなのは、CDと同様。第2楽章からflが独奏で登場する...

2024年2月21日　24番　J　クランプ　Johanees　klumpp　Heidelberger Sinfoniker　を聴取。ハイドンの交響曲の中でも最も調性の多い　D-dur。中期から交響曲の交響曲はこの調性では、高いD音よりもvn.は上がることがある。しかしこのNo.24は、Dより上がる箇所がない。しかし通して聴取すると、Dよりも高い箇所があるように聞こえるほど、レンジが広い録音と思われる雰囲気。しかしなぜか、冒頭の主旋律を副管楽器のob.一番高いD音を単独で受けもつためか、弦楽器の部分に押されてやや、目立たない。
　第2楽章のfl.の独奏部分。この楽団はモダン楽器を使用している。アントニーニと違って古楽器ではないせいか音色が華やか。女性のfl.奏者はライナーノートによると「Karin　Geyer」と氏名が記載されている。同楽団のfacebook　2021年12月2日に本人の顔写真と楽器がアップされている。楽器の写真を見ると材質はよく分からない。しかしキーの位置は現代のfl.と同じの様だ。記事によると2011年から担当しているが、それより前に1996～1999年も演奏した記述がある。あたかもfl.協奏曲の様な楽章。伴奏は弦楽器のみ。vn.は弱音器を付けていないが、fl.よりも音域が高くなる箇所がない。終わり頃のカデンツアの部分。fカデンツアが終わり、弦のパートが加わる箇所。ここでは低弦が早く合流する。
　 Menuetto は、繰り返しの後半は通常通りのスタイル。Trioｎ後、再び Menuetto が最初と同じように繰り返しがあるのは、過去のスタイルと同様。しかしTrio　より前の演奏とは限らない。特に、繰り返しの最後の部分では装飾はもちろん、テンポを微妙に変えている。ちょっとした遊び心にも訴えてくる雰囲気。繰り返しがないとこの手法は難しい。第29集の最後の Menuetto として楽しんでいる指揮者の解釈か？
　弱奏から始まるFinale。No.21のFinaleとは少し異なるかもしれないが、各パートでの休符を挟んだ微妙なズレがある。特に展開部のT39では4分休符。その後、T41では休符がさらに長くなるなどズレが大きくなる。各パートの掛け合いを含めて印象深い。