ハイドン交響曲通しNo. 1-10

音楽聴取記録（交響曲の聴取　各曲の聴取記録　通しNo106　hob-No104 ）
2023年12月24日　更新

通
No

Hob.
Nｏ.

通称名

作曲年

調性

楽
章
数

ｆｌ

ｆｇ

trp

timp

cmb

ランク

聴きどころ、ポイント

106

104

ロンドン

1795

(1)

最後を締めくくる交響曲として遜色なし。

ロンドンシリーズの最後の作曲であり、ハイドンの最後の曲でもある。今まで数多くの交響曲を聴いてきて、D調が一番多かったが、最後もD調で締めくくる。曲の構成は、聴取記録の7つのポイントを今まで何回か記載をしたが、この交響曲でも当てはまる。
　第1楽章の序奏は、d－mol　で始まるが堂々としたもの。主部とは関係がないが、調の対比がすばらしい。第1主題は短いが、主題が提示された後、経過部、展開部等、あらゆる箇所でこの動機が生かされる。
　第2楽章は、不規則な3部形式。中間部の短調の部分は、両端の部分との対比が目立つ。trp.とtimp.も効果的に使われている。　Finaleはロンド形式でなく、ソナタ形式であるが、Spiritosoと作曲者が指定をしている様に、威風堂々とした雰囲気が貫く。第1、第2主題があらゆる箇所で展開されている。
　全体的には楽器の扱い方で、cl.が今まで以上に活躍をしている箇所は多い。打楽器も特に、Finaleの最後の部分は効果的に使われている。
　フィッシャー盤は、ドラティ盤と比較して新しい方である。しかし全集の中では、録音が初期の方であるためか、あるいは指揮者自身の後期交響曲の解釈の仕方の違いなのか、ややメリハリに欠けている。
　カラヤン盤は、以前から聴いているが現代楽器を用いたいる中、今の時代のコンサートのメインの曲としても扱う様な、ゴージャスな演奏。第1、2,3楽章はもちろんそのゴージャスな雰囲気が漂う。一方第2楽章のテンポをかなり全体的に、やや落とした細かい部分も捨てがたい。特に管と弦の微妙な音色と音量の対比が生き生きとして、実際の演奏を目で見たいと思う印象。カラヤン盤を薦めたい。

（2020年1月23日追記　タグとして2010年3月16日とする）

2011年2月19日　FM放送　吉田秀和　ハイドンその生涯と音楽　第59回　No-104　アーノンクール指揮　ロイヤル・コンセルトヘボー管弦楽団による演奏を聴取。この番組も交響曲に関しては、2年近くになるが、これで最後になってしまった。
　全体を通じては滑らかな雰囲気ではあるが、ダイナミックで大家の音楽の印象を受けることで曲の紹介は締めくくる。
　　16小節の序奏は、やや暗い雰囲気が伴うが主部は明るい旋律になる。主部はやや、ゆったりとしたテンポ。第2楽章の主部は、第1楽章と同じゆったり目であるが短調の第2主題では、突如、テンポが速くなりるのが対照的。timp．を含めた楽器が突如鳴り響くため、音色の対比が著しい。過去に通して来たの3者の聴き比べてきた演奏とは対照的。
　それに対してMenuetは、恐ろしいほどテンポが速く、まるでスケルツオの様な雰囲気。（もはや宮廷音楽の舞踏の雰囲気は微塵もない）　それに対して、trioは、ゆったりとしているのが対照的。Finaleは各箇所で微妙なテンポの変化が特徴だと思った。
　全般的にテンポの変化が大きく、各楽章でアクセントが大きい。しかしやはり個人的にはカラヤンのゴージャスな雰囲気をとりたい。

（2020年1月13日追記　タグとして2010年3月16日とする）

2014年12月28日　デイビス盤を聴取.。概して遅めのテンポだが、最後の曲でも変わらず。元々fg.の音が目立っていたが、第2楽章のT118の様に、soloに近い部分で目立っている。
　デイビス盤は、これで一応終了するが、全体をまとめてみると、自分なりには以下の様になる。
（１）楽器は、原則、通常の楽器を使用。
（２）テンポは、概して、遅め。
（３）編成は、比較的、小さめ。管楽器、特に、fg.が良く入っている。作曲年代が下がるほど、fg.の役割が大きいが、この特徴にマッチ。ハイドン自身が、fg.は、cb.　vc.の数がが少なくてもfg.は２本はそろえて欲しい話を以前、取り上げた。(音楽史の中のハイドン　その72）　fg.は初期、中期の頃から.少しずつ、役割が大きくなって行くが、デイビス盤では通して聴くと、その存在感が良く分かる。
（４）cmb.は、全ての曲に入っているが違和感がない。むしろ独自の動きに興味がある。たとえばNo.。42(通しNo.45)の展開部T94の部分に象徴されるように、cmb.が独自の旋律を受け持つ箇所が典型的。
（５）ライブ録音とも関係するかもしれないが、細かい各パートの音が、ホグウッドほどではないが聴き取れる。初期、中期では管楽器はもとより弦楽器にもsoloの指定箇所が多い。当時の演奏スタイルの雰囲気を汲み取るには、ライブ録音の方が適している。フィッシャー、ドラティ盤と違って、じっくりと、各パートの動きを聞きたい場合に、良いと思った。

2015年2月7日　G.　セル盤をNo.88に引き続いて聴取。No.88と同じ録音によるモノラル　1954年4月9日。第1楽章の提示部の繰り返しはない。第2楽章のT74からの再現で、fl.が第1vn.より1オクターブ上で、目出せて欲しいが今ひとつ。No.88のときも同様だが、弱音の部分の出だしで、導入部は、やや遅めのテンポとなる。第3楽章のTrioがその典型。finaleは、きびきびした印象の中にも強弱をつけて、codaに向けて盛り上がる。
　第1楽章の提示部を繰り返しをせず、全曲を通して、この2曲(No.88とNo.104)は、一挙に録音をされた雰囲気。録音データは同じ日になっている。聴衆はいないが、あたかもライブ録音の雰囲気で、同じ雰囲気を保った演奏スタイルで、一気に録音をエネルギッシュにしたものと思う印象。録音状態がよければベストの盤の一つとして推薦したい。

2015年9月11日　C.デイビス　ACO　No.104を聴取。弦楽器、特にvn.の高い音域の差が魅力である第1楽章。T33からの２つのvn.パートの音程の比較は、いつ聴いても印象的であるが、C.デイビス盤の演奏では思ったより目立たない。中期の交響曲の一つ、No.57(同じD調)の第１楽章と比較してみると興味深い。No.57は同じAllegloのテンポであるが、vn.の最高音域はDより高くないと「ハイドン106の交響曲を聴く」には記載されている。
　一方最後の交響曲は、第1楽章では、最後はもっと高い展開部の最後でGまで上がる。中期の時代で、vn.パートをかなり高い音域まで作曲者が書くのは、ためらったかもしれない。一方最後の交響曲では、作曲者と演奏家とは一体的である。このため高い音域の演奏ができると思ったと思う。
　それよりも、低弦の分離がやはり印象的な特徴に、ついつい興味勝ち。第2楽章T9では、vc.が低弦でも高い音域を受け持ち、T61、53のg-mol調のところでは、2つの低弦のパートの分離が良く分かる。T88の再現部では、vc.が主旋律を受け持つなど、低弦の役割は大きい。
　C.デイビス盤を通しての演奏の特徴は、自分なりには、この低弦の役割だと思った。その分、テンポの微妙な変化などは、余りなくオーソドックス。

2015年11月13日　　ノリントン　ロンドンセット　ライブ盤　No.103を聴取。序奏はゆったり目のテンポで、最初からtrp.が活躍。ｆとｐの微妙なニュアンスを重視するノリントン。T83で今まで聴いてきた演奏は、大半はfを通すが、この箇所では僅かに音量を落とし、T86のffと対比。主部の冒頭のT21-22の動機は、この楽章であたかも骨格をなすように、散らばりながら展開する。テヌート、スタッカート、何も付かない通常の３通りのパターンがある。ノリントンのノンレガートは、この３つの対比が丁寧に区別がされて演奏されている。展開部で、ノンレガートの箇所はあるものの（T159-162）、他の楽器に埋もれてしまうのか、それほど目立たない。しかし、最後のT228では、低弦を除くTuttiで、ノンレガートで登場。（ここでは、低弦とfg.は、スタッカートが８分音符の対旋律のに注意）T232のスタッカートと対比されて効果的。
　第2楽章は、パリセットを含む過去ので聴いてきた緩除楽章に共通する様な、速いテンポ。しかし終わりになるに従って、消えるようにテンポを落とすのが効果的。Finaleの長いcodaでT293までは、スラーを含むノンレガートがない。しかしT294からTuttiでノンレガートの音色の対比がすばらしい。
　12曲を通してみてノンレガートの真髄であるピュアトーン。この解釈には、個人差があるかもしれないが。私にはハイドン自身が、自筆楽譜で細かい音符まで、指定をしていたと思う。これに呼応する。ノンレガートの解釈で細かい対比をつけながら表現をしているノリントンの演奏にはぴったりだ。
楽器の配置について。２つのvn.パートが左右に分かれているのは、好みにあう。　しかし、管楽器が周囲に固まり過ぎて、細かい楽器のパートが聴きにくい。ノリントンは、初演当時の人数と配置を再現したとライナーノートに書いてある。ロンドンハノーバースクエアーでの広さなどを考えると合点はいく。（ライブ録音の会場も背後まで聴衆がいる。）Menet　のtrio後半が弦楽器はsoloで演奏するなど、ライブならでは、繰り返して聴いても飽きさせない点も見逃せない。初演あるいは再演後も、録音機材のない当時の聴衆にとって、一生にせいぜい数回しか演奏会には、聴く機会がないであろう。その中で短い大切な時間で聴いてもらう解釈をノリントンは思ったのではないか。それだからこそ、ライブならでは醍醐味に通じると思う。

2015年12月28日　　バースタイン　ニューヨークフィル　No.104を聴取。録音が1958年と少し前になること。録音場所も通常のホールではなく、St．Geroge　Hotel,　Brooklyn、New　Yorkとのデータあり。通常よりも、音の分離間が今まで聴いた中では、やや少なくダイナミックレンジが、少し狭いようだ。繰り返しの採用が少なく細かく、じっくり聴きたい場合、やや戸惑う。
　FinaleのT52から、通常はp指定で作曲者は記している。ここは、よくｆ指定でそのまま一気に流してしまうことが多いが、バースタインは忠実に守っている。これに続くT65からT68にかけて、第１vn.の　p　で引く旋律が、soloで引いている雰囲気。これでザロモンセット12曲を一通りバースタインで聴取する。大編成で弦楽器の厚みを特徴とした雰囲気を味わうには、やはり　No.101がトップに立つ。
　バースタインの演奏を通常通りの順番（作曲順でない）で聴き通してみると、No.93からNo.100にかけて、管楽器のsoloをかなり作曲者が重視しているのが分かる。それに対して、No.101から最後の104までは、管のsoloの部分はやや控えめとなることが、この演奏を聴いて意外な発見となった。

2016年1月7日　Georg　Solti　London盤　の　No104を聴取。CDデッキの不調か、元々のソフトの影響のどちらかわからないが、第1～4楽章のところどころで、再生ができず。

2016年2月15日　プレヴィン　ウイーンフィルのNo.104を聴取。第3楽章のMenuetは、ややゆっくり目のテンポ。弦の厚みがありながらも、各パートが適度に分離があるのが特徴。これは、録音会場のムジークフェラインにもよるかもしれない。Va.とvc.、bassの低弦の厚みがそのひとつお思うが、代表的な部分として。T47048にかけて、低弦を除く旋律は、トリル。この部分で低弦のみ、８分音符で引く。この部分もはっきりと捉えている。

2016年５月１日　ホグウッドNo104を聴取。第2vn.の右側配置については、ここまで聴き通してきて、ゴバーマンほど明確ではなかったので、余り意識をしていなかった。最後の交響曲ではあるが、finaleで、この右側配置の効果が良く分かる。T22－28の間は、２つのvn.パートはTuttiで同じ音程で演奏する。一方、経過主題の一つとして、第2主題が登場する前のT73－80の部分。ここでは、T84からpで登場する前の盛り上がりの部分であるが、各弦のパートが、詳しく聴くと微妙に異なる。特に２つのvn.パートは、旋律と音程ば微妙に異なり、全体が、Tuttiと異なり、盛り上がりはもちろん、広がり感がある。
　この旋律は再現部のT236と終結部分のT301－にも２回に渡り、登場するが重要な部分だと思う。ホグウッドの弦の細かい分離が良く分かる。従来の演奏家では、ここまでの盛り上がりを含めた分離感が分からなかった。

2016年8月16日　ブリュッヘンOrchestra of The Age of Enlightenment No104を聴取。この録音は、録音レベルが高く、ダイナミックレンジが幾分広いように聴こえる。fの部分に微妙な強弱を付けるのが特徴であるが第1楽章　T189からの部分がその典型。第1vn.は、この楽章で最も高いGがT192まで続く。この部分は大半の指揮者は　f　指定を守り、最後の部分のT192のf指定を守る。ブリュッヘンはそれに対して少し弱めている。次のT193から続く再現部のp指定に、旨くつながるような橋渡しの様な雰囲気。
　この最高音は、ハイドンの中期の頃の作品、No.42と対比させてみると面白い。No.42は1770年頃で、約25年前の作品。楽器編成は少ないが同じD調。No.42の第１楽章は、第1vn.は最高音がDまでしか行かない。当時はエステルハージ楽団を中心に作曲していた。最後のこの曲は、それよりも高い音域になっている。No.42の第1楽章を聴いてみると、楽器編成の違いはもちろんあるが、音域が大きく異なり、作曲年代の違いを痛感する。（井上著にもこの最高音のことがNo.42の部分で記載されている）
　少し演奏の論点とはずれるが、中期の交響曲と比較論から発展して、第3楽章を取り上げたい。No.53は同じD調。No.42よりは、時代は少し下がるが楽器編成はcl.を除けば、最後のNo.104に近い編成。No.53のMenuetのT1からの部分が殆ど同じ。主題の一部が共通している。しかしNo.104の方は、小節数がはるかに多く、最後に締めくくるMenuetの風格を持っている。

2016年8月17日　ザロモン編曲による室内合奏の No104ホグウッド　フォルテピアノ盤を聴取。編成はNo.100と同じ。第2楽章などは、フォルテピアノのパートは、装飾音を適宜加えている。ManuetのTrioの部分。オケではob.のsoloの部分は、fl.が担当。Fg.の部分はva.が受け持っている。Finale　のT22の部分から。第vn.と第2vn.がユニゾンで演奏する個所。ここでは、第2vn.や第1vn.を一緒の旋律を引いていない。Tuttiの部分は、逆に、第1vnの旋律が引き立つ。

2016年11月11日　E　ヨッフム　ロンドンフィルハーモニー管弦楽団　No.104聴取。第２楽想T98とT99のスッタカートの部分。ここでは今までの指揮者はスッタカートの指示を守り、流れるような旋律とは対比されている。ヨッフムの演奏は、ここをスラーで通して柔らかい解釈。ヨッフムは第3楽章を概して、遅めのテンポで通している。最後のこの曲も同様。テンポを微妙に変えていて、T８、１６の半終始のトリルの音色が独特。　第２楽章のスッタカートの解釈と同じようにTrioもT84-86の部分でスッタカートではなくスラーで通している。Menuetの主部がスッタカート、スラーなど様々な表現になっているので、この部分をスラーで通しているのは良いと思った。

2017年7月21日　S　チェリビダッケ　　ミュンヘンフィル　No.103を聴取。No.103から引き続き聴取で2曲目。録音年月日は1992年4月14-16日と3日間にわたっている。録音は1曲目と同様に、私の視聴環境では、vn.の定位感が今ひとつ。ハイドンの交響曲を締めくくる最後の曲。最後になる完成度の高い曲だけに、どの箇所をとっても聴き所。今回は第4楽章のFinaleを取り上げてみたい。Finaleは２つの主要主題以外にもコデッタ風の経過主題も大切なポイント。長いFinaleの中で、ゆったりとした長い音符の第2主題もある。それとは対照的にT72からの8分音符の弦（+fg）のユニゾンの主題が盛り上がりを見せるポイントのひとつ。このコデッタは展開部と再現部でも登場する。
　８分音符の弦のコデッタがオケ全体に畳み掛けるように聞かせてくるかがポイントのひとつ。チュリビダッケは遅めのテンポに違和感はないものの、各パートの分離感と盛り上がりがもう少しほしいところ。私としては、ファイを中心とした弦の各パートが定位感と分離感が程よくバランスされた盛り上がりを一番良い印象と思っている。ファイなどの解釈とは少しずれている。このため2曲しか聞いていないが、遅めのテンポとライブに違和感はないもの、定位感不足から今ひとつの印象に終始。

2017年8月22日　N.　アーノンクール　　Royal　Concertgebouw　　Orchestra　No104を聴取。第2楽章の冒頭の第1vn.で提示される主題。2小節目の　sf　指定の部分で、大半の指揮者はこの指定を守る。このため４小節で1区切りとなる第1主題は、最初の　p　と対比も相まって、アクセントのある旋律として聴こえるのが一般的。
　それに対してアーノンクールの場合は、このsf指定を守らず、p　のまま通している。４小節の第1主題は、p　が続くため、T37までの中間部に入る前の部分が、殆ど　ｐ　が続くことになる。これに対して、T38から中間部の短調でエネルギッシュに進む部分との対比が際立っている。もともと、　p　の扱い方は、できるだけどの楽器を受け持ってもアーノンクールは忠実に守っている。（典型的なのは、少し前のNo.100　第1楽章の管楽器から提示される　p　の第1主題など）アーノンクールの演奏を今回、聴きとおしてみて、特に、この　p　の扱いが独特な特徴と思った。

2017年11月25日　　R　レッパード　The Scottish Chamber Orchesta　No.104を聴取。No.101からの引き続く。これといった大きな印象は余りない。Finaleの中のコデッタの盛り上がるような旋律は、チュリビダッケの聴取の部分でも触れた。この演奏でも、思ったほど、codaに向けての盛り上がりは今ひとつ。

2018年8月5日　　T　ファイ　No.104を聴取。1999年の録音で、このシリーズで第1集として、最初に発売されたもの。冒頭からtimp.の炸裂する録音は通常通り。
　この曲の中で昔から一番好きな箇所は、第1主題のあとの経過部T32の部分。２つのvn.が４分音符で急激に、音程が落ちていく箇所。ここでのvn.の音域の差が面白い。弦楽器ならではの音の落差というか違いが、ファイの演奏では、対向配置で旨く表現されている。（左右に広がったvn.の迫力さ）

強弱を微妙に変えている箇所は、ファイでも随所にあるが、この第2主題の部分もその典型。得てして、T101からvn.パートは、fl.とともに、p　で柔らかく演奏される。ファイの場合は、t106からさらに音量を落として、小結尾部の盛り上がりに対比させている。

　第3楽章のMenuetのテンポの速さは、特徴的。過去の演奏でも第3楽章は速いテンポはしばしばめぐり合うが。あたかもNo.1の第1楽章の様な雰囲気。一方、中間部のTrio.は、かなりゆっくり目のテンポと対照的。冒頭のT53は、vn.　+　fg.によりスラーで柔らかく演奏される。それに引き続いてT65からのtrioの後半は、スラーとスタッカートとが交互に現れる。従来までの演奏は、テンポが概して速すぎて、この細かい違いが分かりにくかった。しかしファイの演奏では、ゆくりしたテンポなので、この違いが良く分かる。No.103から通して聴くと、各楽章の短い動機から構成され、展開していく面白さはNo.103の方が長けていると思う。ファイのtimp.の独自の扱い方も相まって、２つの曲を比較するとNo.103の方が面白い。

104番　ロイ・グッドマン　ハノーヴァー・バンド　
2018年10月5日　　　ロイ・グッドマン　ハノーヴァーバンド　104番を聴取。No.100でvc.のｓｏｌｏについて記載をした。ここでは弦楽器のsoloの箇所はない。奏者の数がやや少なく、その分、各パートの細かい音まで良く分かる。たとえばFinaleの冒頭。出だしの左側に位置するhr.の長い低音の持続音などは「いかにも和声を底から支えている」雰囲気がある。しかし、余り強調しない分、根底には柔らかい雰囲気。その後に続くvc.とbass.の部分も、T11から、bass.とvc.が分離して行く部分。bass.の持続音に支えながら、vc.がva.ともに、上がって行く。ここでは得てして低い音域ということもあり余り目立たない箇所ではある。しかしグッドマンではこの細かい動きが良く分かる。

2018年11月2日　104番　カラヤン　ウイーンフィルを聴取。LPであるが、下記のブログにもレビューが記載されている。1959年の録音。60年も経過しているが、現代でも通用する鮮明な録音。モダン楽器でもちろん厚みのある録音。

http://haydnrecarchive.blog130.fc2.com/blog-entry-351.html

上記のブログには、推薦盤と記載されている。確かに非の打ち所がないと思う。逆に今回の聴取記録を書くにあたって、どこから、書いてよいのか迷うばかりが数日、経過していた。その原因のひとつには、魅惑の名曲シリーズで、ウイーンフィルのシリーズであること。このため、ハイドンの交響曲というよりも、ウイーンフィルで様々な指揮者や名曲から取り上げられている点にある。
　もちろん、カラヤン自身、ハイドンの交響曲は後期が大半だし、ベルリンフィルの演奏が多い。逆にウイーンフィルの場合は希少価値に値する。　またザロモンセット12曲のうち、No.104が最後に当たる。「ロンドン｣という名称は後世に付せられたものであると思うが、やはり最後を締めくくるのにふさわしい。このシリーズで最後にカラヤンを持ってきたのは、あくまでハイドンの交響曲のFinaleに向けての選出ではないかと思った。
　概してハイドンの交響曲のFinaleはザロモンセットを含めて、軽めと言うか、さらりと流れる雰囲気が多い。それが大きな特徴のひとつであると思うが。この最後の曲に関しては、やはりfinaleに重点を持ってきていると思う。No.102などと比較してみると面白い。調性こそ違うが序奏があり、第1楽章はがっちりとしている。しかしNo.102の序奏の冒頭は柔らかい和音で始まる。finaleに関しては、No.103はロンドソナタ形式で、演奏時間も短い。また、雰囲気自体が幻想的というかロマン的に、華やかに終わる雰囲気。
　一方No.104の序奏は、短調の和音のTuitti。Finaleはロンド形式ではない通常のソナタ形式。Ｆｉｎａｌｅの様々な動機は多彩で、codaに向けて、エネルギッシュに進む。あたかも104+α交響曲の最後を締めくくるにふさわしい。このため、やはりFinaleの終結に向けて、如何に進んでいくかが一番のポイントになると思う。
　冒頭からd-molのTuittiもtrp.を前面に押し出している。弦楽器が中心の音量ではあるが、そちらかといえば、第1vn.を中心とした旋律をやや目立たせて、曲の構造が分かりやすいように心がけている。第1主題で提示された動機が分割、展開されながらも、初めて聞く人にも分かりやすい。

たとえば展開部の途中で、第2主題が展開されて登場する部分。第1主題の展開から、引き続いて第2主題がバトンタッチする。ここでは第2主題の旋律を、どちらかといえば、引き立たせたい箇所。第2vn.、va.などのパートは、伴奏に徹していて、第1vn.を目立たせている。
ダイナミックレンジの広さも、やはりカラヤンらしい。　第1楽章、timp.展開部の最後で最高音で半終始する部分はもちろん。Menuetのtrioの部分。Menuetの主部は、fの箇所が多い。しかしNo.97とMenuetと同様に、前半は繰り返し記号がなく、強弱で対比させているのも効果的。
一方Trioは柔らかい雰囲気が対照的。Trioの後半で第1、2ｖｎ．が管楽器と掛け合う部分がある。2つのvn.パートで、第2vn.の音量を抑えている。また第1vn.もfg.はob.の旋律（このとき管楽器も　p　なのでかなり音量を落としている）に寄り添うが、あたかもsoloに近いように、　p　で音量を落としている。注意深く聴いてみないと第1vn.の音は聞き取れないほど、ダイナミックレンジが広い。

最初にもFinaleは様々な動機が登場すると記載した。以前の104のチュリリビダッケでT72のコデッタ風の盛り上がる部分がポイントの一つと記載した。カラヤン盤も同様に盛り上がる。しかしここではあえて、T84からの第2主題の部分を取り上げたい。多くの主題や動機の中で、このスラーを伴う柔らかく長旋律は印象的。なんとここで、第1vn.がポルタティメント風にわずかではあるが引いている。指揮者によっては、この演奏スタイルは採用すると思うが、展開部と再現部での類似箇所は、ポルタティメントになっていないので、唯一の箇所。（提示部の繰り返しもなし）　この一瞬のポルタティメンは短く激しい動機が多い中とても印象的。

2019年1月2日　クイケン　ラ・プティト・　バンド　No.10４を聴取。No.93でも記載をしたが「ハイドンの旋律は４小節のフレーズが続くことはまずない」とあった。最近購入した「ハイドンの音符たち」にも、音程の和音を中心としたハイドンの斬新さ、大胆さなどが随所に記載されている。音程に関しては避けて通れない知識が必要だが私には、まだ到達できいない点がある。今回は音程の件は少し避けて、単にスッタカートなどの表記について記載をしたい。
　第2楽章のT98からの部分。短調の中間部を経過し、新たにfl.と弦楽器が変化されながら再登場する部分。第1vn.とfl.は165部音符はスラーで演奏している。指揮者によっては、このスラーの採用をしている手法も多い。クイケンも同様。
　冒頭の第1主題から最初の方はスラーの箇所は多少はあるが、どちらかといえばスタッカートの部分も多い。この当たりの後半からスラーの柔らかい表現が入ってくるのが効果的。Piu　Largo　の部分を挟んでT123からの類似箇所も同様にスラーで通している。この楽章の終わりまで柔らかく静寂に終わる雰囲気を保っている。しかし一部の箇所　たとえばT102の第2vn.などは、調性が分かるためかスラーで奏法をしていない。このため、このT102からT112の　Piu　Largo　の手前までは、第2vn.の緊張感で支えている雰囲気が漂う。

　Finaleでは様々な旋律が登場する。T72からのコデッタ風の８分音符の動機はそのひとつ。以前、チェリビダッケでは、この盛り上がりが今ひとつだと記載をした（下記のブログに譜面あり）

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-743.html

この動機は一見すると単なる8分音符の旋律だけしか見えないが、旋律が微妙に異なり提示部、展開部、再現部にも何度も変えて登場する。表記ではスラーを伴っている。大半の指揮者はこのスラーの指示を守るので流れるような感じが多い。ところがクイケンの場合は、どのパートもスラーの指示ではなく通常の旋律のように演奏している（ただしスタッカートまではいたっていない）　しかしスラーではないため、切れ目があり緊張感を増している。ハイドンの交響曲を締めくくるFinaleの最後の部分は、迫力ある和音で終了する。Codaに向けて、この旋律がスラーで表現されないことに、一役買っていると思った。
　この録音会場について。No.103　冒頭のtimp.の適度な残響が印象的だった。ネットで、何度か検索をしてみたが、録音会場の教会の写真は分からない。しかし日本コロンビアの当時の録音のレビューが記載されていた。クイケンの師弟でもある、コンサートマスター　日本人の寺神戸亮　氏の録音に関するもの。教会はハーレムの市街地にあるようだ。

２０１９年１月16日　104番　　ジェフリ－　テイト　イギリス室内管弦楽団　を聴取。No.94でtimp．を中心に打楽器群について記載をした。クイケンの103でも冒頭のtimp.について記載をした。このときは残響がやや多めの中、自然な雰囲気の録音が特徴と記載をした。
　一方、テイトの方は、スタジオ録音の典型で聞く箇所によって、各パートの音を少しミキシングをしている雰囲気。しかし違和感はない。
　　録音データで第1楽章の序奏の部分だけAdagioとして２’２２が記載されている。トラック番号も別。通常は序奏と主部とは一緒に掲載されているが珍しい。このためかもしれないが、序奏のテンポが少し遅め。遅めの解釈は過去のザロモンセットで聴取してきたのと同様。ここまで聴き通してきた中で、大きな特徴は余り見出せない。しかし逆にこの演奏を柱として、指揮者との違いを楽しむためには、録音を含めてよいと思った。

2019年6月3日　エルンスト・メルツェンドルファー　ウィーン室内管弦楽団　 104番を聴取。序奏の途中からプレエコーが随所にあり。ダイナミックレンジも狭く、歪も目立つ。No.６～８と同様に管楽器と弦楽器のバランスも悪い。協奏交響曲を除くと、最後の交響曲になる。No.１から一連を通して聴いて来た中で、印象が少ないまま最後に締めくくる雰囲気。
過去に何度かレビューしてきたが。楽章間での録音のばらつきが大きいため、全曲を通して聴く中では、ランクがどうしても落ちてしまう。録音レベルがある程度、統一されていれば、全曲を通してのメリットが大きいが。特に、緩叙楽章では、やや遅めのテンポが旨く合っていると思うのだが残念。

2019年7月4日　104番　 N　マリナー　を聴取。マリナーの演奏では最後になる。今まで聴き通してきたのと同じ解釈で締めくくる。No.103　の第1楽章にも触れたが必要に応じて、vn.などの細かい動機を旨く表現している。たとえば、FinaleのT19の部８分音符の第1vn.の切れの良い上昇動機。vn.の厚みがあれば、第1vn.の動機も他のパートと掛け合える。大編成のオケでvn.の奏者が多いと、この部分でもそれほど問題はない。元々やや残響の多く小編成のため、ある意味では、得てして第１vn.が負けてしまう箇所ではある。しかしマリナーの場合は、この箇所でも第1vn.の動機が十分に聞こえる。
　提示部T72のTuittiの経過動機。チュリビダッケのブログ(譜面あり)では、今ひとつのことを記載した。Tuittiではあるがユニゾンではなく、各パートがそれぞれ異なる旋律になっている。手持ちのスコアでは、この部分はスラーの記載がある。しかし指揮者によっては、この部分の各パートが不明瞭になりがち。マリナーの場合は、スラーではなく、スタッカート気味なこともあり、各パートが明確に聴こえるのも良いポイント。
　最後に繰り返しについて記載をしたい。ザロモンセットになると、大半の曲は30分近くの演奏時間になる。No.103にも記載をしたが、Finaleの終わりになるに従い、内周歪の懸念もある。No.104はNo.103ほどではないが、それでも約28分にも渡る。昔の録音だと、LPの片面の収録時間も考慮し、提示部や展開部+再現部の部分を省略するケースもある。
　第3楽章　MenuetでTrioの後、Menuetが再現する部分。前半のスコアでは僅か16小節であるが繰り返し記号はない。最初の出だしのMenuetは、16小節を全て演奏している。しかしTrioの後の、後半の8小節を省略している。他の指揮者も同じ様に8小節をカットしているケースも考えられる。しかし、元々このMenuetは短いこともあり、8小節のカットには疑問。
　またFinaleの提示部も繰り返しがない。Finaleでソナタ形式は余りない。録音の収録による考えか?　あるいは録音とは関係なく元々、繰り返しは考えなかったのか？この当たりは指揮者にしか分からない。しかし私としてはソナタ形式という最後のFinaleということもあり、繰り返しを採用して欲しかった。その方がT72の経過動機を提示部で再確認できるからだ。マリナーの演奏は、このCDセットを含めて、安心して聞けて、自分の好みに合っている。今後も僅かに残っている曲もレビューしていきたい。

2019年11月9日　104番　ニュー・フィルハーモニア管弦楽団を聴取。1965年の録音で同じ頃のNo.88と同じProduserとBalance　Engineer。録音もNo.88に類似し、レンジがやや狭く。強奏では少しひずみがある。ハイドンの最後の交響曲でFinaleは、あえてソナタ形式になっている。このクレンペラーのセットも、収録時間の関係からかNo.92の後に収録されている。偶然かもしれないが、No.92もFinaleはソナタ形式。　　No.104はあえて、ソナタ形式に作曲者が意図したのは、最後の交響曲を雄大に締めるためには、あえてロンドや変奏曲などの形式を採用したくなかったかもしれない。実際、私なりに最後にFinaleを堪能するにあたりソナタ形式がベストであると思う。Finaleは交響曲によっては、洒落た快活な雰囲気の交響曲もある。しかしNo.104に関しては、もうこれ以上、交響曲は書かないことと決めたのか、洒落た快活な雰囲気は見られない。
　雄大に締めくくる一つにはチュリビダッケのレビューでも記載したが、何度も登場するコデッタのような動機がある。（下記のブログに譜面あり）

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-743.html

　この動機は何度も登場するが、８分音符の動機が各弦のパートを中心に、畳みかけるように盛り上がる。この部分がこのFinaleの中核をなしていると思っている。この弦の部分で、vn.の対向配置を生かして、vn.から低弦までうまく表現されていると思った。しかし冒頭にも触れたが録音の点で今一つ。

2020年1月8日　104番　 Josef　Krips　J　クリップス　 London　Symphony　Orchestra　を聴取。No.92と同じ奏者だが、録音はさらに前になる。No.92と同じモノラル録音。No.92以上にレンジが狭く歪が大きい。ある程度、同じ音源の状況なら妥協できる。しかし録音レベルに差が大きく、モノラルでの中央の低位感のふらつきも大きい。録音の悪さの影響が大きく、演奏としての比較が殆どできない状態。

2020年12月20日　ロスバウト　ベルリンフィル　104番　を聴取。No.92から引き続く。1957年のモノラル録音。最後の交響曲でもあり、Finaleは盛り上がりたい。モダン楽器を生かした弦の厚みも聴き所のポイントのひとつ。この曲は、元々、vn.を中心とした弦の音域の広さを堪能したい。同じD調のNo.57の第1楽章と比較すると興味深い。No.57の方はD音より高くならない。一方No.104の方は、さらに高い音まである。奏者(この場合は弦楽器の全ての奏者)の技量も高い音域に伴い、さらに高い技量が要求されると思う。また音域の跳躍もポイントの一つと思う。随所に、vn.を中心に高音域から低音域の差が大きい。
　特にFinaleの最後の方はvn.の最低音のGを含むため終曲に向けて盛り上がりは、うまく聴衆の心をとらえているスタイルだと思う。モノラル録音でレンジが狭いこともあり、終曲に向けての今一つの印象。
　なお、この機会に改めてFinaleのスコアをもう一度、見てみた。ハイドンの最後の交響曲でしかも、このFinaleで最後になる。T301の動機はFinaleの随所で登場する。その前のT293からの部分。今まで何度もこの曲を昔から聴取してきた。ザロモンセットの12曲は、Finaleはソナタ形式が余りない。ロンド形式がその分多くなり、どちらかと言えば、Finaleの規模はやや少なめになる。
　しかし最後のNo.104は、ソナタ形式で長いcodaが続いている。最後の交響曲の終息にも聞こえるが、T293からの箇所からの盛り上がりが素晴らしい。T293からは２つのvn.が最低音域を交えて繰り返しながら音程を上げていく。どの指揮者もこの部分は、クレッシェンドをかけていきT301からの動機につなげていく。この雰囲気を堪能するには、やはり弦の厚みとレンジの広さが欲しいところだ。

2021年6月26日　Pierre　Boulez　　　ウイーンフィル　No.104　を聴取。この曲で3枚組のCDが最後となる。Musikvereinが会場のためか、同じ会場の他の指揮者と同様に直接音が少なく残響が多い録音。　第1楽章T33の　確保の部分。vn.を中心とした音程の差など、昔から聞きどころの一つだと思っている。この指揮者では、録音のためか不明瞭。（下記の自分のブログに譜面あり　T　ファイの演奏）

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-967.html

　第1楽章は音色や音量の差は余り感じないが、第2楽章に入ると、指揮者の耳にも慣れたのか、中間部の短調のダイナミックな部分は対比的でよくわかる。余り注目されないかもしれないが、この第2楽章は、過去のハイドン緩徐楽章と同様に、楽器の音色や強弱をうまく使用していると思う。演奏曲の形式はしばしば登場するが、冒頭から管楽器はfg.のみしか登場しない。中間部　T28　でfl.を中心とした旋律が短調で登場する。音色の変化はもとより、調の変化が極端に変わり、ダイナミックに進んでいく。短調の中間部は、再び戻ってこない。変化が少ない中でも、楽器と音色の使い分けをうまく考えていると思う箇所。
　この演奏とは限らないが、緩徐楽章の冒頭からfg.以外の管楽器はすべて休む中、突如、弦楽器が休み、管楽器のみで登場する部分は印象的。　Finaleの最後方は、かない長いcodaの後に終わる。ライヴ録音ためか拍手入っている。終わってから直後、まだ演奏が終わらないタイミングで左側の端の方から１名？の拍手がフラインングの様に入っている。熱狂的なFinaleで聴衆も拍手をしたと思うが逆に、ライヴならではの雰囲気がよくわかる。

Pierre　Boulez　ウイーンフィル　No.104　その２＋ハイドンのサイン２（再掲）

この3枚組のCDでライナーノートなどについて記載をする。1枚め、No.12の最初のレビューで、表紙の写真を掲載した。ライナーノートの表紙は箱と同じ、正面の肖像画が左を向いている。それに対して裏面は左右対称で右側を向け、少し大きさが小さくなっている。左右に広げてみると、どこが違うのか、少し楽しみがある装丁。
　めくって裏表紙は宮廷楽長の肩書とHaydn自身のサイン　「ろう」による押印がある。この出展は、ウイーン楽友協会　図書館　アーカイブによる。何度か作曲家のサインは見たことはあるが、赤い色の「ろう」でできた刻印は初めてみた。　　英語の説明文はSignature　as　Princely　Esterhazy　Conductor　with　seal　の記載になっている。手紙の封印の一部のようだが、赤い色はとても印象的。普段はモノクロ写真で見ることが大半なので、赤い色はめったに見ないので貴重な体験。　　
　英語版　P62　にあるロンドンのチケットの写真も興味深い。　1972年　５月3日　Haydn自身　のサインともに、通し番号280　となっている。　チケットにHaydn　自身　がサインをしているのは、かねてから承知をしていた。（以下の自分のホームページらの引用）

104番　Leonid　Malyshev　st,　Peterburg　Festival　Symphony　Orchestra

2021 年11月21日　聴取。No101 から引き続く。The　Rose　Collction　直輸入盤　,MADE　IN　DENMARK　となっている。２曲めはNo.104を収録。モダン楽器でvn.は通常配置。この曲も取り立ててこの演奏自体の印象は余りない。録音レベルはこちらの方が少し高い。また残響も多い分、各パートの音が分かりにくい。
　No.101にも記載をしたが、序奏について。No.104については、一部の書籍などでは記載があるかもしれないが。序奏のT3の第1vn.の下降する動機。主部のT100から第2主題のブリッジ部分類似ていると思うが。

2021年12月３日　104番　Igor Markevitch, Orchestre des Concerts Lamoureux　を聴取。No.103から引き続く。No.103にも記載したが、1958年の録音にしては、レンジが狭いのが不満。レンジだけが原因ではないようだ。最近、鈴木秀美　OLC　の残響の多い録音を聴取してきた経緯もあり、残響を含めた録音と使用する楽器、録音会場、録音方法などが気になっている。この録音に関しては、左右のステレオ感は現在の録音に近いものがあるが、奥行き感が余りない。序奏のT14の部分で、tuittiの冒頭の動機を再度、登場する部分。
　この多くの指揮者にも共通するが、このT14の終わりの最後は、冒頭のフェルマータの指示があるように、長く伸ばしてT15に続く。T15はT2と違って、スコアでは　PP　になっている。冒頭と違って序奏が次第に収まってくる部分を予兆されるところ。序奏は１小節の空白を挟んで終了し、提示部に入っていく。ある程度、T15からT16にかけて、時間をかけて終了する。序奏の繰り返しはない。T16にはfg.が入るなど細かい所が聴き所になっている。
　残念ながら、このT15の部分で、前の　ff　の強奏の動機のエコーのような音が少し入っているのか、はっきりと聴こえない。レンジが狭いだけでなく、残響の処理を含めた録音が、余り良くないため各パートの音が分かりにくい。
　序奏以外にもFinaleの盛り上がりに関わる４分音符のコデッタも聴き所。この箇所でもレンジが狭く、各パートの分離感が分かり難い。これらの状況からも全体的な印象は余りない。

104番　G　ショルティ　Georg　Solti　London　Philharmonic　Orchestra　　

2021年12月16日　104番　G　ショルティ　Georg　Solti　London　Philharmonic　Orchestra　　　の　No104を視聴。No.103から引き続く。No.103だけとは限らないが、序奏を含めたテンポの遅い部分は、十分に落としている。それに対して、速い部分は概して速めなのは同じ解釈。第2楽章の後半T88の部分。timp.を含めた打楽器群が入るが、この箇所でも全体の音量は抑えている。
No.103にも共通はしているが、各パートの音は比較的よく聞こえる。Finaleのcodaの部分で1313の部分。Cl.が第2場と一緒に演奏している部分。この箇所でもtimp.を含めた打楽器群の音調を抑えていることもあり、cl.の音もかなり明白に聞こえる。
　
　録音に少し差があるのか、No.103と比較してみると、少し分離感が分かり難い。ライナーノートのデータを見ると、No.104は1985年でHenry　Wood　Hallと記載されている。No.103のKigsway　hall　と異なり、この会場は現役で今でも使用されているようだ。

2022年3月30日　104番　Thomas　Beecham　Royal　Philharmony　orchetra　トーマス・ビーチャム　ロイヤルフィルハーモニー　を聴取。No.101から引き続く。冒頭の序奏ら概して遅めのテンポ。第2楽章も平均的に遅めのテンポに加えて、必要に応じてさらにテンポはリタルダンドをかけながら、テンポの変化が多い。
　第3楽章も同様。Menueteの主部も平均的に遅めのテンポだがTrioでは一層、遅くなる。K　ベームのような雄大な雰囲気。Trioの再度で、Menuetに回帰する前のブリッジの部分。この部分などが典型で、Menuetの回帰に向けてリタルランドとともに、弱奏からさらに音量を下げている。このため回帰してくるMenuteとの音量の差が目立つ。
しかしながら元々、レンジの狭い録音のため音量の差は、新しい録音などと比べると分かり難い。Finaleでは元の音源が悪いのか一部、音飛びや揺れがあるようだ。木管楽器と弦楽器との奥行き感が分かり難いのはNo.101と同様。しかしNo.101ほどに定位感が悪いことはない。このCDは東芝EMIから発売された国内盤。マスターテープの音源によるかもしれないが、CDでもレーベルなどによって差があるかもしれない。録音会場はパリとロンドンの２か所が記載されている。場所と日時も、バランスエンジニアーもそれぞれ異なる。古い録音でもあり複数の音源からマスターテープを作成したのかもしれない。

2023年1月3日　104番　マリス・ヤンソンス（Mariss Jansons）　バイエルン放送交響楽団　を聴取。
下記のハイドン音盤倉庫にもレビューが記載されている。収録順番の　No.104から聴取。

https://haydnrecarchive.blog.fc2.com/blog-entry-944.html

上記のレビューではテンポの揺らし方など色々な記述がある。冒頭の序奏から打楽器のtimp.は目立っている。提示部の最初の方でもtimp.が効果的に入っている。打楽器群はtimp.とともにtrp,も入っているが概して控え目。timp.は随所で活躍しFinaleの最後の方では、一層、花を添えている。
　上記のブログレビューにも一部記載があるが、第2.3楽章のテンポの微妙な揺れが興味深い。指揮者によってテンポの揺れは色々なパターンがある。強奏の直前でテンポと音量を落とすのはよく用いられる手法である。この演奏も同様だが、流れを重視しながらも、テンポの揺らぎと音量の強弱のバランスが取れているのが印象的。 Menuetto 　Trio　T53の最初の部分。ここでは少しずつわずかだがテンポと音量を落としている。T88の類似箇所も同様。繰り返しの後、 Menuetto が回帰する前のブリッジの部分も少しずつテンポと音量を落としながら強奏の Menuetto との対比が印象的。
　このようなテンポや音量の揺らし加減が、指揮者の指示ではあると思うが、オケが指揮者の意図を事前に周知していて肩の凝らない演奏。ライヴをとは殆ど思えないほどに感じる。ベテランの指揮者が手兵のオケをそつなく統率し、ヤンソンス自身の演奏スタイルを表現しているレビューにぴったりだと思った。

2023年6月15日　シャーンドル・ヴェーグ　カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク　103番　を聴取。No.103は1996年の録音だったが、こちらの方は1994年で録音会場が異なる。続けて聴取すると、録音による差が大きい。No.104の方は、録音のレンジが少し狭く、レベルが少しさがり鮮明さが不足。会場内からのノイズも多少大きく入っている。
　No.103の方は鮮明な録音で各パートの動きがよくわかる。それに対して、こちらの方は、録音による影響が大きく、全体的な印象が余りない雰囲気に終始。
　No.103とNo.104にも共通していると思うが。当日はハイドン以外に他の作曲家の作品も演奏されている。ライヴ録音なら、当日の全てのプログラムで聞きたかった。

2023年8月11日　104番　カラヤン　ベルリンフィル　EMI盤を聴取。録音会場は、この後のgrammophon　盤と同じだが、レーヴェルなどが異なる。No.83、　No.101のスイスの会場と異なり、音の定位感は比較的よくわかる。残響もあるが過度でないために、各パートの掛け合も比較的わかりやすい。レンジと音の広がり、奥行き感もこちらの方がよい。収録時間の関係から、第1.4楽章の提示部の繰り返しがないのは残念。
　
1959年のウィーンフィルの自分のレビューもある。

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-1026.html

また、下記のハイドン　音盤倉庫には、各録音を含めたレビューがあり、このEMI盤は好演の記載がある。

https://haydnrecarchive.blog.fc2.com/blog-entry-372.html

ここではFinaleの第2主題の部分を、レガート風に第1vn.が引いていた。しかしこの演奏は、他の奏者と同様の解釈。これ以外でも各楽章で、弦と菅とのバランスが良く、聴きやすい。なお、この後の
　Grammophon 　盤のザロモンセットはレビューをしていなかった。手元に昔からあるが、残っている。No.104を含むザロモンセットを機会があれば、カラヤン盤のレビューを記載する予定。