ハイドン交響曲通しNo. 1-10

音楽聴取記録（交響曲の聴取　各曲の聴取記録　通しNo104　hob-No102　）
2024年1月17日　更新　

通
No

Hob.
Nｏ.

通称名

作曲年

調性

楽
章
数

ｆｌ

ｆｇ

trp

timp

cmb

ランク

聴きどころ、ポイント

104

102

1781

(1)

聴き所を満載した頂点の交響曲

Largo-Vivace

Adagio

Menuet

Finale：Presto

通しNo.88(hob－No.86)で記載した聴き所の(1)～(7)のポイントをすべて網羅した交響曲。第1楽章は、序奏付の大ソナタ。第1主題は、単純ではあるが、最新名曲解説全集にも記載がしてあるように、この動機が、各主題は元より、経過部を含めて、あらゆる箇所で、引用、展開されている。この楽章は、練達の極地と記載されているが、まさに、「練達」の表現がぴったりである。提示部と再現部の中の経過的な主題が、No．86と同様にダイナミックに展開し、締めくくりにもふさわしい。
　一転、第2楽章は、ゆったりなテンポで始まる。ここでは、終始vc．のsoloが活躍するが、timp．の活躍も目を見張る。主題は装飾的で、当時の聴衆の好みを反映していると思うが、楽章全体の雰囲気は、18世紀の音楽でなく、ロマン派時代の音楽に相当すると思う。
　第3楽章も、３連譜の装飾による主題。trio．もsoloが活躍。第4楽章もユーモアの精神が貫く。通称名がないため、それほどこの曲は知られていないと思う。しかし、残りの2曲(103、104)と比較しても、こちらの方に、軍配が私は上がると思った
　昔から、さまざまな演奏を聴いて来たので、どの演奏が良いのか、なかなか、優劣がつき難い。フィシャー版は、soloの扱いが通常通りであるが、録音がやや鮮明でないと思う。ドラティ版は、後期の時代には珍しく、チェンバロが入っている。しかし、それほど違和感はない。
　一方、カラヤン盤は大編成で、夕食の晩餐会を豪勢かつ、細かいところまでも、聴かせてくれる。C.デイビス　アムステルダムコンセルトヘボウは、編成は、大規模に近いが、ややくっきりとした演奏。こちらを薦めたい。以前、LPでヨッフム指揮のベルフィンフィル？を聴いたことがある。聴取環境が今はないので、細かいところまでは記憶にないが、ややゆったりとしたテンポで、ひとつ前のハイドンの解釈としても捨てがたい。

（2020年1月13日追記　タグとして2010年3月14日とする

2011年5月21日　追記　
　ここ約1ヶ月、交響曲の聴取が滞っていた。エステルハージ時代の1760年代の頃から少し、時代が下がって、後期の曲を再度聴取。ショルティと言うと、ついつい、マーラーのエネルギッシュの演奏をイメージしてしまいがち。しかし、このハイドンのシリーズは割合にオーソドックス。
　４つの楽章の中で、一番特徴のあるのは、やはり第2楽章。第1楽章までは、大編成で細かい楽器の音色は聞き難いのは前記した通り。しかし、第2楽章では、主調とはかなり離れた遠隔調（F）で、落ち着いた雰囲気。調の変化は大きい影響。冒頭から弱音ながらtimp.が登場するのも、斬新的。codaでのtrp.同様。これらの楽器が消える様に終わる。18世紀末頃の音楽とは思えない。この楽章に限っては、ベートーベンやシューベルトを通り越して、ブルックナー、マーラーなどの時代の音楽にも匹敵すると思う。このショルティの演奏は、100年以上も先の時代がかなり経ている雰囲気を旨く,表現していると思った。
　元々、昔からこの曲はとても気に入っていて、細かい箇所まで聴き所はたくさんある。第1楽章では、様々な旋律が登場し、楽章全体の構成が、やや分かりにくく、通して聴くと、盛りだくさん。このため、やや分かり難い点もあるかもしれない。

2012年6月15日　追記　その１　　　ハイドンの交響曲では、久々、後期の交響曲を執筆。今回は、G、ヘルビッヒ　ドレスデンフィル　で1974年頃の録音を聴取。このロンドセットは、最近、HMVで入手。12曲のロンドンセットは、CDだと5枚組みになる可能性もあるが、このCDは4枚で収まっている。
　編成は、現代楽器では、典型的雰囲気。vcのsoloもそれほど目立たず。ショルテイの「ごつい」、あるいはカラヤンの「ゴージャス｣な雰囲気、というには縁が遠い。録音は、私の環境でも、分離間がある。全体的にオーソドックスに終始し、特徴を記載することは、難しい。

追記　その２　以下のサイトに　No.102の聞き比べが記載。　http://karajan2.blog101.fc2.com/category73-1.html
この録音は、ドレスデン　ルカ教会でとのこと。他の演奏も多数、記載されている。　ノリントンの演奏は、vn.は対向配置とのこと。興味がある。

2014年12月26日　デイビス盤を聴取。最近ハイドンを聞き始めたきっかけを記載したが、元々なぜか、ずっと以前から、この曲だけは、別格で何回も聴いていた。演奏は、ドラティのもので、LPではなく、ミュージックテープとして購入したもの。外出先では、ウォークマンにテープを入れたが、電池がすぐに消耗したことを覚えている。ドラティでは、cmb.が常に入っていたが、当時のの演奏では、入らないことが一般的だったと思うが違和感はなかった。
　デイビス盤を最近、この前当たりのNo.100当たりの同じ演奏で聞き比べてみると、cmb.がはいっているかどうかが、分かりにくかった。しかしこの曲では、最初から、はっきりと聴き取れる。テンポは概して遅めだが、この演奏でも、序奏と主部に入っても同様。テンポこそ違うが、演奏スタイルは、ドラティ盤にも似ている。しかし、fg.などがしっかりと聴き取れるので、管楽器を中心としたパート音が鮮明。以前から、ニックネームがなく、通が利く曲と思っていたが、その部分のひとつが、展開部のT160の部分。ここでは提示部の2つの主題に共通する動機(T54の低弦)が、半小節ずつ、第1vn.→第2vn.→低弦　に呼応してカノン風に、調性を変えながら、何回も繰り替えされる。デイビス盤では、各パートが鮮明に聞える。
　幻想的な第2楽章は、　提示部は、単純な繰り返し記号があるとついつい思ってしますう。しかし、スコアでは繰り返しではなく、微妙にtimp.等が後半に入ってくる渋さ。テンポが遅い分、じっくりとその違いがわかる。第2楽章のゆっくりとしたテンポの中で、soloに近いtimp.が活躍するなどは、一度、聴いただけでは聞き逃しがち。聞き比べで、No.86とともに、よく取り上げている理由は、私は今でも同じ気持ちだ。
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2015年8月15日　C.デイビス　ACO　No.102を聴取。第1楽章のきびきびとした動機は、ひとつ前のNo.101と同様に展開。しかし、思ったより速めのテンポ。vc.とbass.の分離箇所は、余りないこともあり、聴き所としては、No.101と比べて、減っている感じ。

2015年11月8日　　ノリントン　ロンドンセット　ライブ盤　No.102を聴取。第1楽章の主部は思ったより遅いテンポで終始。主部に入ってからのT24の僅か1章節にも満たない短い動機が、いたるところで活躍し、スラーとスッタカートを伴っている。ノリントンのノンレガートの奏法も含めた音色の対比を期待してみたが、思ったより対比箇所が少ないような雰囲気。　それに対して、MenuetのT２６当たりからのノンレガートの解釈などが面白い。

2015年12月25日　　バースタイン　ニューヨークフィル　No.102を聴取。No.101に引き続いて聴取。録音場所は従来と同じであるが、録音年が1962年と少し前になる。No.101と同様に、管楽器のsoloの箇所が少なく、弦の各パートのTuttiが聴き所。第1楽章も、T22からの冒頭の動機は重要だが。それ以上に、T24の4分音符の動機が、さらに縦横。この動機は、あらゆる楽器で受け継がれる。T57での経過部の第１vn.の動機（これは序奏の変形でもある）にばかり、聴き取られがち。しかし第2vn.にもこのT24の動機が常に伴う。バースタインの演奏では、各パートが左右に広がり、重厚に聴こえるので、聴き応えがある。その分、管楽器のｓｏｌｏは、余り目立たない。しかし曲の性格からして、管楽器が目立たないのは違和感なし。

2016年1月5日　Georg　Solti　London盤　の　No102を聴取。序奏のテンポ　Largoは通常通り。主部に入って、Vavaceのテンポは、No.97.98と同じ様に速めに終始。バースタインと比べて、重厚は少ないが、逆に、音の分離と定位感が程よいため、特に弦楽器の各パートの旋律が良く分かる。T52から登場する４分音符の持続的な旋律はT78まで、殆ど、登場している。この動機は、展開部の後半T192で、Tuttiで各パートで転調を繰り返す重要なもの。大半の指揮者は、T56から第2vn.に、引き継がれいくが、得てして第１vn.の高い旋律に埋もれてしまい、明確に聴き取りにくいことが多い。しかしこのショルティでは、他のパートに負けることなく、しっかりと謡っている。展開部T151からの弦　各パート　fzの旋律も、明白。（ハイドンはこの旋律をfz　で書いている）
　第2楽章は、バースタインと同様にテンポを落として、soloのvc.は中央にやや右側に位置。遠隔調で、楽章の途中から、p　でtimp.とtrip、が使用されるこの楽章は、当時の聴衆は驚いたと思う。ショルティの演奏は、ホールの中央の良い席で、一人がこれらの各パートをバランスよく聴いている雰囲気。

2016年2月13日　プレヴィン　ウイーンフィルのCDをNo102を聴取。第1楽章のLargoのテンポは忠実に守っているので、通常に聴かれるスピード。Vivaceのテンポは、ややゆっくり目。No.92や96と同様に、やや厚めの弦楽器による録音だが、弦の各パートは、広がり感と奥行き間がよく出ている。録音がよいのか、弦の各パートの音の粒がそろっているように聞こえる。fとp　の対比は、それほどないが、時には、つぼを押さえている。たとえば展開部の真ん中当たりのT162から。ここでは、第１、第2、vc.．の各パートが半小節遅れて、動機が登場。スコアではそれぞれのパートにfzの指定があり、プレヴィンの演奏では、この旋律を目立たせている。
　No.96finaleでは、timp.の活躍を記載した。No.102の第2楽章でも同様に、活躍。この第2楽章は、一度、聴いただけでは、この曲の良さが分かり難い。すなわち、提示部では、繰り返し記号ばないが、ほぼ同じ様な繰り返しがある様に聴き勝ち。T2からvc.のsoloが活躍することもあり、ついつい弦楽器の方に耳が入ってしまう。しかしそればかりでなく、繰り返しがある２回めは、timp.とtrp。rrp、hr.がT47から入る。プレヴィンの演奏は、このT47の新たに追加で登場するこれらの楽器を旨く表現。
　Finaleも流れを重視して、微妙なfとp　の表現があるが、Tuttiのfzの指定でも、粗野にならない表現を重視。バースタインなどの重厚な表現とは対照的。

016年8月14日　ブリュッヘンOrchestra of The Age of Enlightenment No102を聴取。Finaleのcodaで、終わる直前は、一気にfを通すのではなく、一瞬、pを取り入れて締めくくるのがブリュッヘンの特徴。この曲でもT301で、一瞬、pで弱めて終わる。初めて聞くと、少し戸惑うかもしれないが、ブリュッヘンの特徴を既に熟知しているので、戸惑うことなし。

2016年9月19日　N.マリナー　アカデミー室内管弦楽団　N0.102を聴取。第1楽章の各動機が「練達」のキーワードで展開する。第2主題　T82の全音符。今まで聴取して来た指揮者が、この全音符を忠実に守るあるいは、やや短めに終える。これに対してマリナーの演奏は、全音符を僅かではあるが、少し長めに演奏する。それに続くT82の全休符は通常通り。各動機が展開される中で、この第2主題は、テンポ、調などが第1主題や経過主題と鋭く対比する。この僅かに長く引きずる第2主題が新鮮に聴こえる。

2016年11月3日　E　ヨッフム　ロンドンフィルハーモニー管弦楽団　No.102聴取。第2楽章は予想以上に遅めのテンポ。終わりの方のT57からp指定で消えるように音量を落としていく。今までの演奏は、最後の部分は、通常のテンポであったが、ヨッフムでは、次第にテンポを落としていくのが印象的。

2017年4月9日T．ファイ　No.102を聴取。パソコンが不調になり買い換える。以下のサイトにこのCDのレビューがある。

http://micha072.blog.fc2.com/

冒頭の序奏は、かなり遅いテンポ。ハイドンが得意とするシンコペーションのリズムが（T11～）が登場するが、主部では使用なし。第3楽章のMenuetの主部はかなり速いテンポ。Presto並みに駆け抜ける。全てが同じテンポではなく、時によっては極端にテンポを落とす。このテンポの変化が面白い。また、T42の第１vn.の部分でfｚの個所。ここでは、一瞬ではあるが、僅かに間を置いている。この間がT42に続くMenuetの主題の速い回帰に旨くつながっている。一方Trioは、かなりテンポを落とす。繰り返しの部分では、管楽器のsoloを十分に堪能できる。回帰してくる速いMenutetと対照的。Menuetの回帰の部分で同じ個所のT42の部分。繰り返しでは、間をおかずに一気に終わるのもスムーズな解釈。

Finaleは、管楽器のsoloが随所にあり、弦楽器との対比が面白い。Vn.の対向配置も効果的。随所に、２つのvn.パートが対等に掛け合う。弦の各パートも左右に広がって近接音に近い録音をも相まって堪能できる。たとえばT190からの第1主題の展開していく部分。ここでは珍しくva.が第1vn.と共に、掛け合う。右側、やや奥にいる第1vn.と対等に掛け合う。ファイの演奏では、後半の２楽章が楽しめる印象。

2017年6月9日　ラトル　　City of Birmingham Symphony Orchestra 　No.102を聴取。下記のブログにもレビューがある。

http://micha072.blog.fc2.com/blog-entry-117.html

ニックネームがない交響曲だが、どの楽章をとっても、聴き所が散りばめられている曲。同じ奏者でも、何度か聞いていく中で、意外な発見があるのがハイドンの特徴だが、この曲はそのひとつの典型。ハイドンに「はまる」前は、12曲のロンドンセットを全て聴いたことはなく、せいぜいニックネームの曲を数人の指揮者で聴いた程度。しかし、102番だけは、なぜかドラティの演奏（当時は、カセットテープの発売で、持ち運びのできるウオークマンで聴いていた）何度も聴いていた。（裏面あるいは、表面は、ロンドンセットの中の１曲だと思うが、こちらの方は、何度も聴いていない）教科書的かもしれないか、cmb.が入る演奏に当時は違和感があったが、「かっちり」と隙間のない曲に目覚めた曲。

(以下は自分のブログからの一部引用した部分もあり)
http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-322.html

さて、今回、ラトルの関連では２枚のものをまとめて購入。作曲順番だと、これが６曲目にあたり最後になる。ラトルは、ニックネームの曲は余り録音をしていないようだが最後に、この曲を持ってきたのは、締めくくりのためかもしれない。（ただし、このCDでは３曲収録されている中で２曲目に当たる。）　少し前のNo.86は秀演だったので、2曲目でも問題ないと思うが。
音量の対比に微妙な強弱のニュアンスを付けるのはラトルの特徴のひとつ。ファイにも共通する部分はある。ファイの場合は、どちらかといえば、自然な流れを重視せず、スコアの背後にあるものを、一瞬、一瞬ごとにスポットを当てている。その分、流れるような雰囲気には余りならない。
一方、ラトルの場合は流れるような雰囲気を重視。たとえば、第1楽章のT78からの第2主題が登場する直前の箇所。T70あたりのf指定を重視して、一般にT80までf　で通して演奏することが多い。しかし、ラトルの場合は、T78から次第に少し音量を落とす。T81から短調のfで登場する第２主題との対比を出している。再現部でも同様の解釈。

　視覚効果が高い曲としてNo.100について、何度も記載をした。この曲にも当てはまる。すなわち、第2楽章で、timp.とtrp.は弱音器の指定になっている。特にtrp.の弱音器の使用はハイドンの交響曲では余り用いられない。第1楽章で要所に弱音器がないtrp.がここで切り替わる。初演を聴いた当時の聴衆は、第1楽章が終わった直後、弱音器を装着する仕草をみて、いつになったら使用するのか、気になったに違いない。冒頭から第1vn.による主題.が登場し、その後T2からvc.のsoloによる分散和音の旋律が続く。ここまでは打楽器群が使用されていないので、聴衆はじっと観察をしているであろう。
その後、T16から提示部と繰り返しが同じような旋律が聞こえる。打楽器群以外は確かに、同じ旋律。しかし打楽器群がここから加わる。この加わる一瞬を見て、聴衆は驚いたに違いない。当時は演奏会でしか音源はなかったので、この一瞬の雰囲気は印象が高かったと思う。T16の最初に加わる部分は、ラトルでは余りtrp.が目立たない。しかし、T26の部分では、他のパートと一緒ではあるが、音量は落としているものの、はっきりとtrp.が際立っている。
少し前のNo.86のCapriccioと同様に繰り返し記号はない。ロンドソナタ形式のようではあるが、繰り返し記号はなく、楽器編成に打楽器群が加わる。弱音器の使用を含めた打楽器群とvc.のsoloがあるのはNo.86と異なる。いたるところに強弱の変化と旋律の微妙な変化があり18世紀後半に作曲された曲とは思えない。19世紀の中盤のロマン派の作曲された楽章にも匹敵する幻想的な雰囲気が漂う。ただし、冒頭の旋律は短い単位で構成されていて、長い旋律を歌わせるような曲でない。何回か聴き通すとハイドンらしい特徴が分かってくると思う。（一般の19世紀のロマン派の作曲スタイルは、長い小節数の旋律を歌わせることを前面に押し出している）

2017年8月15日　N.　アーノンクール　　Royal　Concertgebouw　　Orchestra　No102を聴取。ひとつ前のNo.101のTrioの速いテンポについて記載をしたが、こちらの方は通常通りのテンポ。
　Finaleのテンポも通常通り。Codaの部分で、T274から第1vn.のみが演奏する部分。ここからpで最後のT282に向かっていく繋ぎの部分。第1vn.は通常よりも少しずつテンポを落としている。この当たりは、過去の指揮者にもしばしば見られるかもしれない。Finaleのテンポは、これ以外の箇所では、殆ど同じなので、このrit.が効果的。

2018年5月15日　102番　ロスバウト　バーデン＝バーデン南西ドイツ放送交響楽団　を聴取。No.10ほどではないが、視覚効果の高い曲。第2楽章では、第1楽章と調性の代わるtrp.が弱音器をつけて登場。vc.のsoloもあり、各楽器のパートの受け渡しなどが聴き所であるがモノラル録音のため、やはり難しい部分が多い。

2018年9月19日　レナード・スラットキン　フィルハーモニア管弦楽団　No.102を聴取。No.101から引き続く。第1楽章の序奏は、Largoでもかなり遅め。No.100にもあったが、序奏の最後でfl.の装飾が入る。
　主部に入ってからは、テンポは少し速め。大編成の弦の厚みを生かして、Tuittiでの大音量が堪能できる。vn.の対向配置を生かして、各パートの分離が良い。展開部の真ん中当たりT160。ここから第2主題の一部の動機が、各パートで遅れて追従していく部分。ここでも「くっきり」と引きたたせる。
かつて、カセットテープでしばしば聞いたドラテイ盤では、Tuittiでもcmb.が入り、fg.も低弦と一緒に明白にあった。スラットキンでは、この様なスタイルではないのが対照的。大編成なりの魅力がある。第2楽章での弱音器を使用したtrp.は、やや右側に位置。

2018年12月31日　クイケン　ラ・プティト・　バンド　No.102を聴取。冒頭の序奏の部分。ここでは、繰り返しがないので注意深く聴く必要がある。最初の小節のフェルマー付きのBの主和音。この長さをどこまで表現するのかは、No.103の冒頭と同様に興味深い。クレッシェンド等の記号があるので、微妙な表現にもなる。クイケンの演奏では、Tuittiでの第1小節の和音のトータルの長さは通常だと思う。和音の切れ目が終わらないうちに、第2小節から始まる第1vn.、第2vn.va.から始まる第2小節の旋律が開始する。和音の名残を少し引きずるように演奏されるのが興味深い。その後に続くT8の箇所でも同様。
　ハイドンの交響曲では　Bのtrp.が初めて入る曲。しかも第2楽章では、弱音器を使用。trp.は冒頭からではないが随所にも登場する。しかし一番目立つ箇所は、終わりの方のT56(譜例のひとつ前の部分)　多くの指揮者は、この部分で　ｆの弱音器をつけたtrp.の存在を知ることが多い。クイケンの場合もここまでは、余り目立たないほうだった。その後、T57以降の終結までは、trp.の存在が余り分からないことが多い。Trp.に類似した音色のhr.はこのときは、ずっと低音域になっている。Trp.はわずかではあるが独自の動きがある。クイケンの場合は、この部分のtrp.の動きが良く分かる。
なお、個人的には、この曲に関しては、vn.は対向配置を好む。特にFinaleでは、随所にvn.同士の掛け合いの箇所が多い。このやり取りを楽しむには、対向配置の方が引き立つと思う。クイケンの場合は、通常配置なのが残念。

2019年5月27日　エルンスト・メルツェンドルファー　ウィーン室内管弦楽団　102番を聴取。冒頭から管楽器や打楽器の奥行き感が不足し、平面的な雰囲気。第2楽章のテンポは、珍しく、やや速め。vc.のsoloは左側。弱音器をつけたtrp.とtimp.の音色が聴き所のひとつ。第1楽章に比較して、trp.とtimp.の音が強調され、前面に出てきている雰囲気。このため、Tuittiでの音の奥行き感に違和感がある。第2楽章の一番最後のT60の部分。フェルマーターのTuittiでtimp.を含めて終了する。スコアや指揮者の解釈によるかもしれないが、timp.がトレモロになっている。元々kitimp,の音が大きい分、逆に、この細かい音が分かる。Finaleに向けての歪は殆どないが。録音の良い、様々な指揮者の演奏が多い中では印象は少ない。

2019年11月7日　102番　ニュー・フィルハーモニア管弦楽団を聴取。クレンペラーではvn.は対向配置。第2vn.が右側に位置している。この第1楽章はザロモンセットの中でも特に、第1vn.と第2vn.の対比が多い。ざっとスコアを見たところ、冒頭の序奏のBの和音は、さすがに同じ音程だ。それ以降は第2主題のT81とその後に続くの部分のみが同じ音程。それ以外は、ほとんど第1vn.と第2vn.とは同じ音域でユニゾンで演奏する箇所が、最後の1小節まで続かない。裏を返せば、２つのvn.のパートは常に、違う旋律を引いていることになる。Tuittiの箇所では、動機や旋律は同じであるが、それでも音域が異なる。
　対向配置を生かして、第2vn.の独自の動きが、手に取るようにわかる。テンポがやや遅い分、この２つのvn.の細かい動きが対比されている。今までこの演奏を何度も聴取してきたが、ここまで、２つのvn.の対比があったのは大きな収穫と思った

2023年1月8日　102番　　R　グッドマン　ハノーヴァバンド　Roy　Goodman　The　Hanover　band　を聴取。No.101から引き続く。下記のブログにレビューが記載されている。

http://micha072.blog.fc2.com/blog-entry-114.html

　上記によると第1楽章は速めのテンポながら、普通のテンポの様に活気を感じるとの記載がある。この楽章を含めてテンポが速めなのは共通。No.102は昔から聴取をしているが、元々、A　ドラティの楷書的でcmb.が入る演奏のイメージが元になる。一方、グッドマンの演奏は、テンポがもちろん速めで、拍子によるアクセントが特徴。速いテンポでも活気がある背景には、この拍子によるアクセントが影響しているかもしれない。
　第3楽章　 Menuetto は、No.101と同様に速いテンポは共通している。拍子のアクセントの入れ方も第1拍めに入れる。回帰する Menuetto の繰り返しも採用しているのも共通。ドラティのかなりゆっくりしたテンポとは対照的。

　第4楽章の最初の方で、管楽器が入る部分がある。このT13とT16の箇所で、菅楽器以外の音が私には聞こえる。楽器の奏者が出すときにキーの音か？
　あるいは低弦や通奏低音からの音か？　中間部のT141の類似箇所も同様。No.73にも同じような経験があった。

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-1290.html

　しかし、さほど気になることではない。ハイドンの交響曲はスコアをよく見ると、微妙な拍子の変化やズレがあり面白い。過去にも何度もレビューをしてきたが、初期から中期の交響曲でも、Finaleを中心にフレーズの微妙な入り方が特徴的と記載した。第1vn.は第1拍めでなく裏拍になっている。その後、元に戻っている。
対向配置を生かした、２つのvn.の掛け合いも聴き所。井上著　ハイドン　106の　交響曲の中で、著者は、初めてこの　Finaleを聴いたとき、18世紀の交響曲ではなく、20世紀の現代の曲だと記載があった。ハイドンのFinaleは様々な形式がある。このFinaleは小節数が短いものの、限られた楽器の中で、ロンドソナタ型式で、強弱、テンポなど微妙な変化がある。
　録音に関して。奏者の数は、恐らくひとつ前と同じNo.101と録音方法も同様だと思うが。こちらの方の録音は、私の聴取環境の違いかもしれないが、フォルテピアノが少し、右側に寄っている。第2楽章の弱音器を付けたtrp.やhr.も奥行き感がある。TimpはNo.101と違って、奥の方に位置していて違和感がない。こちらの方の録音が自然な雰囲気。　
　No.102の初演は第2期　ザロモン交響曲になるので、ハノーヴァスクエアではなく　キングシアターホールだったと思う。演奏会場の大きさはやや広かったかもしれない。奏者の数や楽器の数なども同様。グッドマンの楽器は１７９８年のフォルテピアノ。このCDの奏者の数も、vn.が各７名ずつなので初演当時と同じ程度。ハイドン自身が　フォルテピアノと指揮とを兼任していれば、このような演奏だったかもしれない。古楽器をベースに、各パートが鮮明に聞けるCD。
　キングシアターホールは残響が１秒余りだが、聴衆が満席だと残響時間がさらに短くなる。現代の私たちは、録音という記録媒体があり、好きな時にあたかも何度も同じように音を聴くことができる。しかし当時は記録媒体がなかった。ライヴの演奏で事前に周知されたチラシなどで高価なチケットを何とか入手し、限られた貴重な演奏会に参列した。演奏会はもちろんライヴとして貴重な時間であり、周囲の会場の環境（隣同士あるいは離れている観客の挙動など）も余り気にせず、舞台に集中して演奏を視覚、聴覚から聞き取っていたに違いない。このような臨場感ある想像をしながら当時の音の再現として印象が残った。

2023年6月4日　102番　　C　アバド　ヨーロッパ室内管弦楽団を聴取。下記のブログにNo.102のレビューがあり。timp.は　古楽器仕様でないかの記述あり。

http://micha072.blog.fc2.com/blog-entry-121.html

過去から様々な指揮者や奏者でこの曲をレビューしてきた。独身時代のカセットテープの時代から聴取してきた。音楽の友社　最新名曲解説全集でも、ザロモンセット中でニックネームはついていないが、この第1楽章は練達の極みとの記憶が残る。No.101と同様に、短い動機から構成される主題。しかしNo.102の方は、第2主題が明確な対比となっている。（しかしよく見ると解説全集にも記載がされているように　第2主題の一部は　T27の第1主題が引用されている）また、No.99などに見られるように、第1主題をもとに経過的な動機がキーワードとなっているのも意外に知られていないと思う。
　序奏の部分は繰り返しがない。曲の最初の部分になり流れるように終わるので、最初に聞いた印象が残り難い。例によってシンコペーションのリズムも少し登場する。しかしこの箇所のみで他の箇所はない。　また序奏の旋律の一部は、第1主題の一部を暗示させている。今でこそCDで何度も様々な奏者で印刷物などを参照して、我々はこのあたりの曲の構成、ち密さなどを知ることができる。録音媒体のなかった初演当時は、スコアとし印刷物も殆どなく（初演当時からパート譜、あるいは室内楽版の編曲で印刷物としては流通したが、スコアとして出版されたのはその後になる）このため聴衆がこの曲の細かい所を知る手段としては演奏機会がまだ少ないコンサート、あるいはパート譜などからしか分からなかった。
　ネットの時代だと著作権の切れたランドン版のスコアを見ることができる。CDの種類も増え、古楽器を含めた様々な演奏を聴取できる。
　アバドは古楽器ではないが奏者の数は絞り、やや速めのテンポながら、要所ではテンポを微妙に変えている。No.102の第2楽章は、弦楽器と同様に弱音器の付けた指示がある。またtrp.もミュートの指示がある。冒頭からvc..のオブリガートが目立っている。このためか打楽器群が弱音器を付ける部分は余り分かり難い。大半の奏者はcodaに近いT55で知ることになる。　各パートの動きが分かりやすいのか、T16の部分でもよくわかる。また上記のブログにも　timp.についてのレビューがある。

Menuetto の主部は概して速いテンポながらも、trioはかなりゆっくりめで対比。なお、これまでは繰り返しの後半、装飾が少なかった。しかしこの曲に関しては、装飾がかなりあるのは意外。
録音音年月日がこのCDでは1996年になっている。しかしハイドン音盤倉庫のデータでは1994年1月となっている。1996年は発売日かもしれない。

102番　　オルフェウス室内管弦楽団　2024年1月16日　追記

2024年1月9日　　No.102。No.78から引き続く。No.78と異なり打楽器群が入る。No.78にも記載したが、菅楽器のhr.の音が余り目立たない。Timp.とtrp.はやや右側に位置。第2楽章の最後の部分で、指揮者によっては、弱音器を付けたtrp.が目立つ箇所がある。しかし余り目立たない。木管楽器は、そこそこ弦楽器と対等に近い音色。しかし弦の奏者の数が多いような雰囲気。下記のブログ(クイケン)のレビューに譜例あり

http://mistee01.blog118.fc2.com/blog-entry-1053.html

　この曲だけとは限らないが。指揮者がいない分、テンポを揺らしたりする部分が少ないような気がする。アーノンクール、T　ファイのように、旋律によって、突如、テンポが変わる部分がある。スコアを一定なテンポで卒なく演奏するため、テンポが殆ど変わらないように私は感じる。ある意味指揮者が不在の分、デメリットになると思った。