交響曲の聴取 ハイドン交響曲 第1期 交響曲様式の模索 (掲載済み)アクセスカウンターページカウンタsince2011年8月15日
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No Hob.No.*1 通称名 作曲年 調性 楽章数 楽器編成*2 ランク*3 聴きどころ、ポイント
fl fg hr trp timp cemb
1 1 1757 D 3 (1) 2 B 記念すべき第1曲。クレッシェンド効果
2 37 1757/58 C 4 (1) 2 (2) (有) 必要 C 小編成でしっとりの第3楽章。音色の変化
3 18 1757-59 3 (1) 2 必要 C menuetの最後のコーダで締めくくり
4 2 1757-59 C 3 (1) 2 D リピートなしの楽章あり。
5 4 1757-60 D 4 (1) 2 必要 B 早くも低弦独自の旋律
6 27 1757-60 3 (1) 2 必要 C sicilianoのピチカート
7 10 1758-60 D 3 (1) 2 C 合奏協奏曲の形式が初めて登場
8 20 1758-60 C 4 (1) 2 2 B cantabileの第2violinの動き
9 17 1760-61 F 3 (1) 2 必要 D Alleglo 展開部でのカノン風の扱い方
10 19 1757-59 D 3 (1) 2 必要 B 第1楽章、第2楽章を中心としたvn.の掛け合い。
11 107 A 1760-61 B 3 (1) 2 必要 C 終楽章のcodaの意義
12 25 1760-61 C 3 (1) 2 必要 A 第1楽章で序奏付きの最初の曲
13 11 1760-61 Es 4 (1) 2 必要 B cantabileは モーツアルトに類似
14 5 1760-61 A 4 (1) 2 B No.6-8の予兆、Hrのsolo
15 32 1760-61 C 4 (1) 2 2 必要 D 曲順に応じた入れ替え
16 15 1761
6-12月
4 (1) 2 必要 C ピチカートの効果
17 3 1761 6-12月 G 4 (1) 2 必要 B 短いながらもカノン風の力強いFinale
18 6 1761
6-12月
D 4 1 (1) 2 必要 A 合奏協奏曲。全てのパートのsoloあり。
19 7 1761
6-12月
C 4 1 (1) 2 必要 A 第2楽章だけを聴くと、fl.2本、vn.vc.の協奏交響曲
20 8 夕べ 1761
6-12月
G 4 1 (1) 2 必要 A fl.とob.2本の同時の登場によるユニゾン
21 36 1761-62
62春以前
Es 4 (1) 2 必要 C 第1楽章の展開部の素材が豊富
22 33 1761-62
62春以前
C 4 (1) 2 2 必要 D No.38との対比。5年の開き。
23 9 1762
62春
3 (2) (1) C 持ち替えfl.のユニゾン。
24 108 B 1762 B 4 (1) 2 必要 D 習作風の4楽章。
25 14 1762 4 (1) 2 必要 C Andanteでのvn.vc.の終始ユニゾン。
26 40 1763
F 4 (1) 2 必要 B fugaの終楽章と盛り上がったcoda。
27 12 1763
初め
3 (1) 2 D 小規模のソナタ形式で全楽章が終始
28 16 1763
B 3 (1) 2 必要 C 随所にvc.の活躍
29 34 1763
中頃
4 (1) 2 A 第1楽章から第2楽章にかけての調性と強弱の対比。
30 72 1763
8-12月
D 4 1 (1) 4 A 4本のhr.は様々な活躍。
31 13 1763
8-12月
4 1 (1) 4 B 均整がとれた4楽章でチェンバロなし。
32 23 1764
第1四半期
G 4 (1) 2 D Prestoでピチカート終了の意外さ。
33 22 哲学者 1764 Es 4 (1) 2 必要 C ob.の代わりにE.Hを使用。
34 21 1764
第2四半期
A 4 (1) 2 C Menuetは モーツアルトのkv525の第3楽章の出だしに類似。
35 24 1764
第2四半期
D 4 1 (1) 2 B 初めて主調とは異なる短調の再現による効果。
36 30 アレルヤ 1765
C 3 1 (1) 2 必要 C Menuetの最終楽章でtorio2部形式。
37 31 ホルン信号 1765
5-9月
D 4 1 (1) 4 必要 A 4本のhr.の掛け合いと第4楽章の最後に冒頭の曲想が登場。
38 39 1765 4 (1) 4 C 4本のhr,は特に活躍せず。
39 29 1765 E 4 (1) 2 必要 C Andanteの第2vn.の掛け合い。
40 28 1765
末頃
A 4 (1) 2 D 執拗な主題の提示と展開。
交響曲の聴取 ハイドン交響曲 第2期 バロック様式の同化 (掲載済み) 本文へジャンプ
通No Hob.No.*1 通称名 作曲年 調性 楽章数 楽器編成*2 ランク*3 聴きどころ、ポイント
fl fg hr trp timp cemb
41 38 echo 1767 C 4 (1) 2 2 A echoの雰囲気。全楽章の均整が取れている。
42 26 Lamentatione 1768 d 3 (1) 2 B 3楽章で終わるのが惜しい
43 35 1767 F 4 (1) 2 D Allegloの長い提示部。
44 41 1768 C 4 1 (1) 2 2 不要 B モーツアルトのNo. 34の類似。
45 42 17719-12月 D 4 1 2 不要 B Moderato e maestosoの表示通り堂々とした大規模なソナタ形式。
46 43 Merkur 1770/71 Es 4 (1) 2 不要 C 通称名なら、むしろNo.42の方がふさわしい。
47 58 1767
末頃
F 4 (1) 2 必要 D 全般的に習作風。
48 59 火事 1768 A 4 (1) 2 B 小気味良いPrestoの描写音楽。
49 65 1769 A 4 (1) 2 不要 D Menuettoで、3拍子と4拍子が混同されてせわしい。
50 64 時の移ろい 1773 A 4 (1) 2 不要 C Allegloで様々な主題が登場することからの由来か?
51 44 哀悼 1770-71 e 4 (1) 2 不要 A 転調を組み合わせるための移行旋律の登場と省略の効果
52 46 1772
第2四半期
H 4 (1) 2 不要 C 第4楽章のcodaで突如第3楽章が出現。
53 47 1772
G 4 (1) 2 不要 D 短調の大作の中の小品。
54 45 告別 1772
第2四半期
fis 4 (1) 2 不要 B 第4楽章は、ユーモアの雰囲気で。
55 48 Maria Theresia 1769 C 4 (1) 2 2 不要 A 祝祭的交響曲の頂点。
56 51 1773
春?
B 4 (1) 2 不要 C Adagioのhr.soloの音域の広さ。
57 50 1773-74 C 4 (1) 2 2 不要 C Finaleが調を変えた単一の主題による形式。
58 49 受難 1768 f 4 (1) 2 B fの調性を通す統一感と2重対位法主題。
59 52 1771
第2四半期
4 (1) 2 不要 C 大規模で、短調ながらも、明るい雰囲気

交響曲の聴取 ハイドン交響曲 第3期 聴衆への迎合と実験 (掲載済み) 本文へジャンプ
通No Hob.No.*1 通称名 作曲年 調性 楽章数 楽器編成*2 ランク*3 聴きどころ、ポイント
fl fg hr trp timp cemb
60 53 帝国 1778-79 D 4 1 1 2 不要 A 変形された動機をバック半音の下降をしながら主調に戻る。
61 54 1774
第1四半期
G 4 2 2 2 2 不要 B Adagioの謡う様な主題とロマン的な雰囲気。
62 55 校長先生 1774 Es 4 1 2 不要 B Finaleのロンド形式と変奏曲の混在
63 56 1774
第2四半期
C 4 1 2 2 不要 B Adagioの2本obの音色。
64 57 1774
第2四半期
D 4 (1) 2 不要 C Finaleのテンポの速さ、とテンポの変化。
65 60 迂闊者 1774 C 6 (1) 2 2 不要 C あくまで組曲の一つとして聴く交響曲。
66 61 1776 D 4 1 2 2 不要 C 後期に通じる旋律と強弱の対比が充実したMenuet
67 63 La Roxelane 1779
C 4 1 1 2 (有) (有) 不要 C 実際の表記よりゆったりとしたテンポのFinale。
68 62 1780 D 4 1 2 不要 D 同じ調性に終始し、長いFinaleによる散漫なイメージ。
69 66 Ludon 1774-75? B 4 2 2 不要 B vc.とcbの分離。fg.を中心とした終楽章の確立。
70 68 1774-75? B 4 2 2 不要 D 音色の変化が中心だが、印象が散漫。
71 67 1774-75? F 4 2 2 不要 A CDの聴取よりも楽器の演奏を実際に見てみたい曲
72 69 1774-75? C 4 2 2 2 不要 B 親しみやすい旋律と通称名で当時からの人気作品。
73 70 1778-79 D 4 1 2 2 不要 B Finaleの3つの主題によるフーガ。対旋律が全体を支配。
74 71 1778-79 F 4 1 1 2 不要 C 管の役割が上がり、後期につながる明るいFinale。
75 73 La chasse 1781 D 4 1 2 2 2 不要 A hrを中心とした音色の変化とダイナミックさ
76 74 1780 Es 4 1 2 2 2 不要 C 休止と音色の変化を重視。Finaleの流れるような印象と対照的。
77 75 1779
D 4 1 1 2 2 不要 B 第1楽章でのテンポの速い爽快感の流れ
78 76 1781? Es 4 1 2 2 不要 C 第2楽章で2つの主題を均等に扱ったての展開と盛り上がり。
79 77 1781? B 4 1 2 2 不要 B 親しみやすい旋律と明るい雰囲気で、第3期のシリーズで第1候補。
80 78 1782? 4 1 2 2 不要 B 第1楽章の展開部は、対位法を駆使した一番の充実。
81 79 1782
11月20日以前
F 4 1 2 2 不要 D 大衆向けの分かりやすさを意識し過ぎて散漫な印象。
82 80 1782
11月8日以前
4 1 2 2 不要 C 第2楽章の前打音を含む主題と丁寧、かつ、しっとりとした雰囲気。
83 81 1784
11月8日以前
G 4 1 2 2 不要 D ピチカートを中心に音色の変化を随所で聴かせてくれる箇所はあるが、散漫に終始。
交響曲の聴取 ハイドン交響曲 第4期 古典的完成 (掲載済み) 本文へジャンプ
通No Hob.No.*1 通称名 作曲年 調性 楽章数 楽器編成*2 ランク*3 聴きどころ、ポイント
fl fg hr trp timp cemb
84 82 1786? C 4 1 2 2 2 不要 A Finaleの盛り上がり
85 83 めんどり 1785 g 4 1 2 2 不要 A 第1楽章の第1主題と経過部での低弦vc.とbassが分離
86 84 1785 Es 4 1 2 2 不要 B Finaleの自由な形式を堪能。
87 85 王妃 1785 B 4 1 2 2 不要 C ロンドソナタ形式の流れを楽しむ。
88 86 1787 D 4 1 2 2 2 不要 A 聴取記のポイントで示した様に、完成された交響曲の頂点
89 87 1785 A 4 1 2 2 不要 A 久々の協奏交響曲風のスタイルで管楽器の音色が楽しみ
90 88 V字 1787 G 4 1 2 2 2 不要 B 第1楽章のロマン的な雰囲気を排除。それに対して、ユーモアな終楽章。
91 89 1787 F 4 1 2 2 2 不要 C 管の扱いがさらに増し細かい聴き所は多いが、如何せん、主題が平凡
92 90 1788 C 4 1 2 2 2 不要 B オーソドックスな構成が中心であり、入門の作品としても推薦。
93 91 1788 Es 4 1 2 2 不要 B 半音階と対位法の主題の典型
94 92 1789 G 4 1 2 2 2 不要 C 軽くしゃれた感じだが、無駄な音符はない。

交響曲の聴取 ハイドン交響曲 第5期 円熟(随時更新中)
;khr 40.979
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通No Hob.No.*1 通称名 作曲年 調性 楽章数 楽器編成*2 ランク*3 聴きどころ、ポイント
fl fg hr cl trp timp cemb
95 93 1792
2月17日
D 4 2 2 2 2 2 不要 C Menuetのtrioにもtrp.とtimp.が用いられる迫力。
96 94 驚愕 1791
3月23日
G 4 2 2 2 2 2 不要 B ロンドソナタ形式を確立したFinale
97 95 1791
5月3-4日
4 2 2 2 2 2 不要 D ロンドソナタ形式ととフーガを加えた独自の様式
98 96 奇跡 1791 D 4 2 2  2 2 2 不要 C 緩徐楽章で打楽器等を用いながらも、音色の対比を十分に発揮
99 97 1792
5月3-4日
C 4 2 2 2 2 2 不要 A ロンドソナタ形式で迫力のあるFinale
100 98 1792
3月2日
B 4 2 2 2 2 2 Finaleの最後で一部soloあり A 曲の構成が長いながらも充実し、soloを含む強弱、音色の対比がすばらしく、視覚効果の高い曲。
101 99 1792
2月10日
Es 4 2 2 2 2 2 不要 B 経過の主題が両主題を支配し、楽章全体を展開。
102 100 軍隊 1793
3月31日
G 4 2 2 2 2 2 不要 A 打楽器の視覚効果を取り入れた頂点の曲。
103 101 時計 1794
3月3日
D 4 2 2 2 2 2 不要 C 宮廷音楽が影を潜めたMenuetは、もはや大衆のために変遷。
104 102 1795
2月2日
B 4 2 2 2 2 2 不要 A 聴き所を満載した頂点の交響曲
105 103 太鼓連打 1795
3月2日
Es 4 2 2 2 2 2 不要 B 第1楽章の序奏の扱い方は後世に影響
106 104 ロンドン 1795
5月4日
D 4 2 2 2 2 2 不要 B 最後を締めくくる交響曲として遜色なし。




*1 Hob ホーボーケン 番号 
*2 楽器編成は、全てob(オーボエ)2人を含むが省略。 ()は、持ち替を示す。(有)→追加、必要に応じて。
*3 ランクは、作者なりの考え。A→文句なしのお勧め。B→お勧め、C→余りお勧めしない。、D→お勧めしない。お暇なら。

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 22.ウェブ アニメータ聴き手とナビゲーションの例え 2015年6月24日 追記
(その1)最近、バックナンバーで入手したレコード芸術 2009年6月号から。 ラディカルな開拓者 没後200年 ヨーゼフ・ハイドン の特集記事がその中にある。 ハイドンの魅力 −仕掛けが満載  ハイドンに惚れ込んでいる男ふたりが語る の部分からの引用。ここでは 飯森 豊水、安田 和信 両氏の2名が、僅か2ページの紙面であるが、端的に交響曲の魅力について語っている。
 この中では、1780年代のパリセット以前の作品では、いかに旋律線で遊ぶかで楽しんでいるところが分かること。それが分かってくると、面白さが尽きない。その細やかさは音楽通のエステルハージ侯爵の主眼で書かれたところが大きいこと。どんな作品を披露し続けてきたかの実績が、聴き手にも作曲家にも共有されている中でのコミュニケーションにもなる。
  それに対して名曲のほまれ高いパリセット、ロンドンセットは、大ホールに集う都市の聴衆、つまり「一般向け」に作曲された。旋律構造が規則正しく、親しみやくすなり、和声に迫力が伴い、いっそう意図が分かりやすいところがある。和声上では、No.92の第1楽章の部分から、最終的な和声が落ち着かない仕掛けなどについて、言及されている。
 これに引き続いて、キーワードとして、聴き手のナビゲーションシステムが登場。聴き手が漫然として聴いているだけは曲の魅力が十分に分からない。曲の始まりがあって、目的地があり、今までこうやって来ていてとうのを、あたかも鳥が上から見ているような視線で見る。この後どういう展開になることを予測しながら、言わば戦略的に聴く。このたとえは興味深い。

(その2)引き続き那須田 務氏の「交響曲作品 期は熟した 104曲を味わいつくそう」の中から。ここでは交響曲の3つの特徴に言及。多様性、意外性、旋律や響きの個性。多様性は、エステルハージ侯爵とその周辺の宮廷に集う聴衆を満足させることの最優先として作曲されたこと。自ら楽器を奢しみ、音楽理論を学び、音楽を聴いて和声や形式が分かる人たち。
 エステルハージ時代のハイドンの聴衆の全てが、そうだとはいわないが、少なくとも仕事上の立場に影響を与える一握りの人たちはそうだっただろう。彼らは日常生活において凡庸さや退屈を嫌うと同じように、音楽においても彼らの趣味に適う洗練と品の良さを同時に、個性を満足させる変化をもとめて、そしてときには、音楽を通じて、侯爵に何らかのメッセージを伝えることもあった。ハイドンは、こうした様々な状況において作曲に取り組み、水準の高い成果を出していった。
 また、旋律や響きの個性の例として、筆者は、旋律や響きは作曲者の指紋のようなものだ。ハイドンの旋律や響きは、他の時代よりもモーツァルトやヴァンハル、サリエリ等と同時代の作曲家に比べると、一層際立つ。旋律でいえば、ハイドンには幼少の頃から生まれて育ち、生活してきた周辺環境が大きいといえるが、この様なハイドン独自の個性は18世紀後半の演奏習慣(最近ではピリオド奏法のほうが通りやすいかもしれない)に準拠した演奏によって初めて、明らかになったと筆者は考える。→当時の演奏習慣も合わせて考えること。指紋に類似した考えは、ハイドン音楽史にも、このコーナーで触れている。 
 

聴き手のナビゲーションの例え 2015年7月8日 追記
(その3)鈴木秀美 「ハイドン作品は まるで おもちゃ箱」の記事から。その2に引き続いて、見開き2ページに渡ってインタビュー形式で記載されている。
ヨーロッパでの18世紀オーケストラ や ラ・プティット・バンド等で長く演奏してきた経験を踏まえて。拍子と不協和音の2点が特徴。ハイドンといえば、四角四面で規格そのもののようなイメージを描く人が多い。スコアを覗くと機知に富んでいて、生き生きとした世界が広がっている。いわゆるソナタ形式もハイドンが作ったかのように思われているかもしれない。しかし作品には、そういった形式に嵌らないものもたくさんある。展開部の短さに驚かされ、再現部が来たと思ったら、予想を裏切られ全然違うものが来る。予期しない転調があり。例を挙げ始めたら切りがない。あらゆるところに創意工夫が見える。そこには、定石がどうかを知っているからこそ、楽しめるといった側面があるかもしれない。
 ブリュッヘンもいっているように、モーツァルトは一種の「万人向け」なところ、誰にでも好まれるところがある。ハイドンは玄人好みというのか、音楽をある程度知っていて、初めてユーモアとはアイデアが見えて微笑むことができる作曲だ。少々大雑把な言い方であるが、モーツァルトは色彩の作曲家。ハイドンはアイデアの作曲家。これには二人に環境の違いも影響を与えている。モーツァルトは生涯どこかの専属の宮廷作曲家にならなかった。作曲に際して、限定的な条件は一定ではなく思った色彩を表現するためには、好きな楽器を選らんでかくことができた。しかしステルハージ家に就職したハイドンに与えられたオーケストラは、当初13人ほどであった。それで演奏できるものを書いた。ハイドンは、音楽通のエステルハージ侯爵とその客人の環境を十分にそそり、同時にオーケストラをまとめ、作曲家兼リーダーとして、アピールしなければならなかった。制約が多ければ多きいほど、アイデアを練らざるを得なかった。
 私たち演奏家は、いつも、どこのハイドンが気を配っていたかを、あるアイデアを、宝探しの様に探していけなければならない。発見できなかったら、漫然とメロディーが流れる退屈な演奏になってしまう。

 これらのコメントから私なりに整理をしてみると、やはり、タイトルの「おもちゃ箱」がキーワードになってくると思う。おもちゃ箱は、色々なものがあるかもしれないが、一般的なイメージとして、子どもが対象だけとは限らない。子どもなりに、おもちゃの機能として楽しむことはできよう。しかし、子どもだけが対象ではなく、大人も楽しめる。おもちゃ箱は、子どもだけでなく、大人になっても、子どもの経験や理論を踏まえて、新たな観点で再び楽しむことができる。モーツァルトの作品が、決して、ハイドンに劣るとは思っていない。しかし過去のコメントにも少し書いたが、モーツァルトは漫才の様に、感情に直接訴える万人に共通した美しさがある。
 それに対して、ハイドンは、玄人好みの、筋道が分かっていてから楽しめる落語のように、基礎知識が必要とされる。形式一つにとっても、漫然と聴いただけでは、その微妙な違いが分からない。井上著の冒頭に、指揮者の岩城宏之が「ハイドンは苦手」と記載してあった。スコアをある程度読める知識や、その当時の聴衆や、演奏家、演奏された目的などの背景も理解しないと、その曲の特徴が分からない点が多い。交響曲だけをとっても106曲ある。大半は3から4楽章で構成されているので、各楽章の数の主要主題だけを上げても、400曲近く。400曲は、ぞれぞれ、調性、テンポ、拍子、演奏楽器の数が、時代とともに、大きく異なる。しかも、各楽章の中でも、調性、テンポ、拍子、soloなどの演奏者の数の指定も異なる箇所が多い。しかも演奏家の解釈で、大きく異なる。この膨大な違いを聞き比べていくには、大変な労力が必要だろう。しかし醍醐味でもある。今まで、ハイドンの魅力を何回か書いてきた中で、集約できるような考えの一つだと思った。


聴き手のナビゲーションの例え 2015年9月28日 追記
(その4)ノリントンの94番の演奏を聴く前後に、この交響曲の由来などについて、ネットで調べてみた。この中で、ハイドン106の交響曲を聴くで、最初の部分でも触れてあった岩城宏之氏の「ハイドンは苦手」の部分に関連したコメントがあった。アマチュアオーケストラ 新交響楽団でのハイドンの紹介プログラムからのコメントで以下のサイトで見られる。
http://www.shinkyo.com/concert/i214-2.html

ここでは、アマチュアオーケストラでのハイドンを演奏する機会が少ない理由などが主に論点となっている。大曲と比べて管楽器の出番が少ない。弦楽器では過去の時代を知っている我々では、現代の大編成の弦楽器で、うまく表現ができるかなど。
これらに加えて、3番目として演奏の難しさがある。ここでは、例の楽譜の風景からの引用がある。
 「ベートーヴェン以後の交響曲の隆盛を知り、その恩恵を充分に蒙っている現代の我々は、ハイドンの交響曲をともすれば未だ完成されていないスタイルの「習作」のように捉えがちな気がしている。
 それは速い楽章のメリハリの無さと見えたり、緩徐楽章の冗漫さと感じられたり、或いはオーケストレーションの未分化(木管楽器のパートは2本揃っていても殆どがユニゾンである)などという形で耳目に障る事がある。これらは作曲者の生きた時代背景を反映している。
 我々は概ね、この印象を拭いきれない時点で、ハイドンの交響曲をプログラム検討の俎上から下ろしてしまっている。実に残念且つ愚かしい事だと考えざるを得ない。
 現実にはそうした点を克服し、一個の確立したスタイルを表出した演奏を作り上げる過程で詳細に作品の構造を見てゆくと、岩城氏のいう「複雑さ」に気づき、「難しさ」に行き当たるのである。ここで初めてハイドンの交響曲の演奏に対するやりがいが理解されうる状態になる。」
 ここでは、やはりハイドンを含めて過去を知っていることから、ある意味ジレンマも考えられる。すなわち、ハイドンの前はもとより当時、及びその後の歴史まで、現代の我々は知っている。一方、ハイドンの演奏された当時は、現代音楽であった。特にロンドンでは、新作が披露され、演奏会では聴衆も演奏に反応した。当時は作曲と演奏がセットであった。
 それに対して我々、現代はハイドン以降の作曲者や演奏を知っている。特にベートーヴェンの様な曲を最初に知ってしまうと、ハイドンは後ろに追いやられてしまう傾向にあろう。それに伴いハイドンの複雑さ、難しさなども影に追いやられてしまうのではないかと思った。